サンローラン(Saint Laurent)の2023年夏コレクションがフランス・パリで発表された。
着想源となったのは、アメリカのモダンダンスを代表する舞踏家 マーサ・グレアムが、『Lamentation(哀歌)』で着用したチューブ状のタイトドレス。頭からつま先まで包み込むようなこのドレスは、視覚文化やファッションに多大なる衝撃を与えたという。
ムッシュ イヴ・サンローランもそんな彼女のドレスに魅了された一人。1969年にクロード・ラレンとのコラボレーションで制作したフード付きシフォンドレスをはじめ、1985年春夏オートクチュールコレクション、そして本人による最後のショーとなった2002年秋冬オートクチュールコレクションと幾度となく引用した。中でも1980年代半ばに発表したフード付きドレス「カプッチョ」は、メゾンを象徴するキーモチーフとなっている。
クリエイティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロは、そんな歴史あるドレスを再解釈。前シーズンに提案した細長いシルエットを再びフィーチャーしつつ、エレガントでありながら、どこかリラクシングなムードを感じさせるコレクションを展開していく。
今季の主役となるフード付きドレスには、なめらかなシルクジャージーニットを採用。やわらかく身体に優しく寄り添う素材を贅沢に使用し、地面に届くほど長い、流れるようなシルエットのドレスを作り上げた。
また、シアーなタンクドレスやカシミヤのパンツ、サテンのセットアップも、シルクジャージーニットドレスと同様にコレクションの中に漂うエフォートレスなムードを加速させていく。
今季の特徴のもう一つに、マスキュリンなアウターウェアが繰り返し提案されたのも挙げられるであろう。力強いショルダーラインのウールコートやレザーのボンバージャケット、ビッグシルエットのトレンチコートが登場し、そのどれもがコントラストを効かせるようにリラクシングなピースと一緒に提案された。
カラーは、ブラックやブラウン、バーガンディー、カーキなど落ち着いた色味が主流。そこにスカルプチュアルなウッドやゴールドのジュエリーをあわせ、華やかなアクセントを加えた。