コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)の2023年春夏コレクションがフランス・パリで発表された。
約2年半ぶりにパリで発表を行った今シーズン。ショーノートには、“今の世界を憂い嘆く、そしてそれに寄り添いたい気持ち”と綴られている。しなしながら、真っ白なランウェイを舞台に発表されたショーピースは、一見、不穏な印象を受けるものの、そのどれもがポジティブなエネルギーをはらんでいるように思われる。
ファーストルックは、モデルの顔を包み込む巨大なフードが付いたピースからスタート。続いて発表されたドレスも、頭から胴体をすっぽりと覆うようにデザインされている。いずれも、大きな石や岩を思わせる静的なフォルムでありながらも、冷たさではなくどこか優しさを感じさせるのは、2種類の異なる布地を重ねた繊細な素材が使用されているからであろう。
クラシカルなアイテムに大胆なアレンジを加えることで、これまでに見たことのない異様なフォルムを作り上げたようなピースも目を引く。中世ヨーロッパの貴族が纏うドレスを逆さにしたような一着はその好例で、ワイドなパンツはボリューミーなパフスリーブを原形としているようだ。また、ウエスト部分を驚くほど拡張させ、スリーブを極端に長く伸ばしたロングコートも披露された。
カラーパレットは、中盤まではブラックをベースとしたモノトーンカラーが席巻していたものの、ラストに向けて、ホワイト、そしてピンクや赤に色づいていく。それは目を伏せたくなるような出来事が続く鬱屈とした日々の先には心穏やかに過ごせる世界が広がっている、暗い影の中には必ず明るい希望が潜んでいるということを教えてくれているようだった。
コレクションを俯瞰して見ると、誰一人として同じ人間がいないように、1つ1つのショーピースは完全に独立しているように見えた。しかしそんな中で散見されたフラワーモチーフは、今シーズンの共通項を作るように取り入れられたように思われる。プリントやレース、ジャカードなどによって表現された花々が希望の象徴のごとくショーピースの上で可憐に咲き誇っていた。
なお、今シーズンもサロモン(SALOMON)とのコラボレーションシューズが登場した。