ヌメロ ヴェントゥーノ(N21)の2023-24年秋冬コレクションが発表された。
今季のテーマは、「Striking Down Clichés(常套句を打ち消す)」。ファッションは本来自由なものでありながら、文化的慣習に支配された固定概念が最もあらわれやすい存在でもある。コレクションでは、フェミニンなワードローブを侵食する“常套句”をあえて並べることにより、それらをより強く認識し、揺さぶり、打ち消すことを試みた。
ヒントとなったのは、1960年代のミケランジェロ・アントニオーニの映画。『夜(La notte)』のモニカ・ヴィッティとジャンヌ・モロー、または『赤い砂漠(Deserto rosso)』のヴィッティだ。社会経済が大きく発展した結果、人々が疑問と不満を抱き、狡猾さや裏切りを通して官能やエロティシズムが見いだされた時代。変化に伴いイタリアの地方や中流階級の常識は揺らぎ崩れていったが、崩壊に直面することは、却って新しいものを求める機会へと繋がってゆく。
象徴的なのは、2枚のスリップドレスを重ね合わせたドレスや、スリップドレスを逆さにしたようなスカート。さらに、透け感のあるナイロン素材を重ねたヌーディーなレイヤードスタイルなど、トロンプルイユの効果を多く持たせたルックが展開された。
また、既存のスタイルに疑問を投げかけるように、シルエットを再解釈。例えば、女性的なイメージを持つカーディガンには、身体の厚みを誇張するようにフェイクファー素材を使用している。さらに、マニッシュなストライプシャツとラッカー仕上げのサテンスカートを合わせ、異なる要素を一体の中に共存させた。
随所に差し込まれたアニマル柄のシアリング素材も印象的。ロングジャケットやシングルブレストコート、ニットトップス、カーディガンの襟やセンターに配され、自由な遊び心が感じられる。
シューズとバッグは極めてシンプルに“常套句”を表現。特殊な構造で作られたヒールの見えないシューズには、レザー、パテントレザー、モッククロコ、アニマル柄のファー、サテンといった多彩なマテリアルが使用されている。カラーは素材の質感が映えるブラックやピンク、グリーンを用意。また、ゴールドのメタルロッドでアクセントを効かせた新作バッグ「エディス」が発表された。