マックスマーラ(Max Mara)の2023-24年秋冬コレクションがイタリア・ミラノで発表された。
今季のマックスマーラが焦点を当てたのは、合理的思考が主流だった18世紀の啓蒙時代に、自由なスピリットで多大な影響を与えた知識人のエミリー・デュ・シャトレ侯爵夫人だ。まだ女性が社会進出できない中、彼女はウィットに富んだ発想で女性の教育や社会的役割、自然科学について考察し、知的な論議を重ね、声を上げ続けた。
そんなエミリーは、複雑なまでに華美で制約が多い当時のスタイルから、現代に通じるワードローブへと導いた一人に違いない、とマックスマーラは解釈。エミリーをはじめとする知的かつフラットな女性たち「キャメロクラシー」を、コレクションの衣服を通じて称賛している。
ボリューミーなドレープをはじめ、羽根飾りや真っ白なおしろい、カツラといった、時流に反して非理性的なファッションが続いていた啓蒙時代。理性を重んじる時代に沿うように、リッチなブロケード素材のパニエやビスチェ、シュミーズは、緻密な計算で再構築されているのが特徴だ。これらのアイテムは、タートルネックやチャンキーヒールブーツとのミニマルな組み合わせを提案している。
さらに注目すべきは、18世紀のワードローブにモダン要素をプラスしている点。例えば、膝上丈またはくるぶし丈のパニエスカートには、ドローストリングやカジュアルなポケットが施されている。そのほか、キャメルカラーのフィッシュテールパーカはリバーシブル仕様で、豪華なダマスク柄を表にして異なる表情を楽しむこともできる。
また、しばし男装を楽しんでいたというエミリーが扮したであろうメンズライクなルックも展開。髪を黒いリボンで束ね、キャメルのケープを片方の肩に羽織り闊歩する姿は、優れた知識人そのものだ。加えて、柔らかい素材のオーバーコートや大きなマントなど、当時の男性像からインスピレーションを得たアイテムが散見された。
カラーパレットはキャメルを主に、ブラウンやアイボリーなど温かみのあるカラーが並ぶ。ブラックやカーキでは理性や秩序を表しているのに対し、くすみ感のあるピンク&グリーンではロマンチックな雰囲気を漂わせている。