フェンディ(FENDI)年秋冬ウィメンズコレクションは、英国的なスタイルとフェンディの故郷・ローマのスタイルに着想を得ている。とりわけ英国的なスタイルは、国内カルチャーやスタイルが世界に広まると同時に、世界の影響を存分に吸収する時期であった1980年代だ。身に着けるものの芯の強さを感じる当時のファッションは、フェンディファミリーの着こなしにも通ずるものがあるという。
実用的なのにラグジュアリー、シンプルなのにドラマティック、オートクチュールのような特別感がありながらもストリート感もある……そんな相反する要素が重なりあうファッションは、ロンドン的な無頓着というのが適切か、あるいはローマ的な自由というのが適切か。すべては身に着ける人の意思表示へと繋がっている。そして意思表示のあるファッション、つまり衣服を纏うときに実態があるということは、とにかく楽しいものだと、キム・ジョーンズは考える。
厳格なテーラリングは、袖や前合わせのラインが優しい曲線を描き、フェミニンなエッセンスが加えられた。温かみのあるニットをテーラードの上からレイヤードする手法は今季の特徴的なデザインのひとつで、クラシックなスカートスーツに新鮮な魅力をもたらしている。また、レイヤードスタイルのウールコートは、ゆるくベルトで止められ、ホリデーに身に着けるローブのようなムードを醸し出した。
先にも少し触れたニットの巧みなスタイルは、特筆すべき要素のひとつ。例えば、ジャケットの袖口から顔を覗かせるシルクのリブを使ったニットウェアは、まるでなめらかなセカンドスキンのよう。アラン編みやガンジーセーターのようにまさに英国の伝統スタイルをなぞらえている。ヘムが自由に踊るようなニットトップスは、ショールのような風貌で、軽やかなエレガンスを振りまいている。
フェンディを象徴するシアリングとレザーは、独特の存在感を放つものとして。つややかな光沢のあるワックス仕上げから、ニードルパンチによって描いたボタニカル調のアート、精緻なインターシャまで、着ている人の肌にそっと寄り添いながら、快適さをもたらしている。
2025年の創業100周年を前に、馬具の製法に熟達した職人たちが1点1点手作業で作り上げる「セレリア」を象徴するステッチのデザインが、衣類やレザー製品の随所に採用されている。また、「ピーカブー」や「バゲット」、「バイザウェイ」といったアイコンバッグは、触感と実用性が追求され、ソフトな構造で再構成されている。そして、丸みを帯びた新しいショッパーバッグ「ロール」が、この豊かなバッグのラインナップに仲間入りを果たしている。