クリスヴァンアッシュ(KRISVANASSCHE)の2015年春夏コレクションが、フランス・パリで発表された。2005年のブランド立ち上げから20回目という、自身にとっても記念すべきショー。今回彼が掘り下げたのは ”illusion”という言葉の意味だという。
マスキュリンな太いシルエットのセットアップやシャツに、スポーツのエッセンス、変化の効いたレイヤード。近年のクリスは、この組み合わせを繰り返し用いることで、オリジナルのスタイルを築き上げてきた。これに、80年代後半から90年代初頭までのユースカルチャーを組み合わせたのが今季のコレクション。
ショーの序盤に登場したデニムのセットアップは、特殊な染めと洗いによって、まるで雪のような表情を見せる。そんなパンツの膝には切り込み、シューズはモンクストラップシューズ。漂う品格のなかに反骨精神を感じさせる、こうした大胆なミックスは、今シーズンを象徴するスタイルだ。
全体を通して見ると、カラーはミリタリーブルーや光沢感のあるカーキをメインに、ビビッドなオレンジがポイントで用いられている。シャツやタイ、ブルゾンには、全面に馬の頭のモチーフがプリントされていて、ふとした瞬間にポップな表情を見せる。ビーズのサーファーネックレス、タイを収めるポケット付きのシャツ、ロング丈のMA-1など、ユニークなアイテムも華を添えた。
時代の美しさを表現しながら、半年ごとにトレンドが移り変わっていくファッションと、時間が過ぎる中でいつの間にかなくなっていく、人々の若さや反骨精神。コレクションを通してクリスは、”illusion"の意味を、これらの持つ儚さに結びつけていたような気がした。そして2つが重なり合ったコレクションは、ポジティブなエネルギーに溢れている。消える過去より、作り出す未来。10年という節目を迎えた今、彼の見据える未来は明るい。