ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)は、2025年春夏ウィメンズコレクションを発表した。
今シーズンは、文化的な特異性を持つフレンチファッションの「ソフトパワー」としての側面に着目。伝統的な匠の技“サヴォアフェール”と、暮らしの豊かさや日常の中の芸術を意味する“アール・ドゥ・ヴィーヴル”を兼ね備えたフレンチファッションは、人々を魅了しながらも、非常にパワフルなエネルギーを持っている。
「ソフト」でありながら「パワー」もある、という一見矛盾するかのような概念が、いかにしてハーモニーを奏でていくのか。相反する要素の間を往来しながら、調和のポイントを1つ1つおさえていくようなコレクションとなっている。
象徴的なのは、ボリュームと身軽さを同時に感じられる装いだ。大きくカーブを描くように膨らんだバルーンスリーブのジャケットは、絞ったウエストから広がるペプラムによって、分量感と軽快さを1着に共存させている。タイトなボディスーツとのスタイリングによって、より一層軽さが強調されている。また、コンパクトなミニワンピースには、ふわりと空気を含むようなマキシ丈のロングガウンを重ねてスタイリングに意外性を持たせ、パワーショルダーのブラウスやワンピースには、風にたなびくようにしなやかな素材を用いることで優雅さを与えた。
オブジェのような装飾も印象的だ。ミニドレスやジャケットに用いられたシアーな布地には、立体感のあるビジューを大小様々に並べ、繊細な生地の質感とは対照的な量感をプラス。ボックスのミニハンドバッグにも同様にビジューがあしらわれていた。
加えて、ハトメを全面に散りばめたかのようなメタリックなパンツや、マットなブラックのチェーンネックレス、きらびやかなスパンコールやビジューのフリンジスカートなど、その質感に集中を向けさせるような装飾が散見されている。まるで靴から羽が生えているかのような、フェザーだらけのシューズも目を存在感を放っている。
テキスタイルはグラフィカルなモチーフが多用されており、スカーフのように裾をぎゅっと絞ったブラウスやワンピースには、幾何学的なストライプ柄の生地を採用。ところどころかすれたような表情のツイードジャケットや、モノトーンでシックなフラワーモチーフをあしらったロングガウン、ヴィヴィッドなピンクやグリーンをアクセントに効かせた抽象柄のミニドレスなど、余韻を残していくようなテキスタイルの数々が目を引いた。
コレクションのラストには、フランスのアーティスト、ローラン・グラッソによる《過去への探究(Studies into the Past)》シリーズから、5点の絵画作品をフィーチャーし再解釈したアイテムが登場。神秘的な美しさを感じさせつつも、直感的な違和感を喚起するローラン・グラッソの作品を用いることで、人を惹きつける魅力的な部分と影響力の強さを同時に意味する「ソフトパワー」の概念をピースに投影している。
絵の具の筆の跡を思わせるような質感のジャカード地に、奥行きのある色合いで描かれたアートワークをあしらった半袖ジャケットや開襟シャツ、そして全面にアートワークを施した手持ちトランクは、詩的なムードをまとった独特の佇まいを見せていた。