ベルパー(BELPER)の、2025年春夏コレクションを紹介。
ベルパーが2025年春夏シーズンに表現するのは、抑圧から解放に向けて激しく浮き沈みする感情と愛。チリ出身の映画監督アレハンドロ・ホドロフスキーの自伝的映画『エンドレス・ポエトリー』と『リアリティのダンス』がインスピレーション源となっている。
マジック・リアリズムの手法により、時に過激に、時に幻想的に描かれるアレハンドロ・ホドロフスキーの感情表現に触れ、自身の経験や過去を振り返ったというデザイナーの尾崎雄一。ポジティブな経験だけでなく、苦しみや悲しみも含めあらゆる経験が“私の人生”になっている、という実感を経て「すべて愛(LOVE)という言葉に集約されている」という思いをデザインに投影した。
象徴的なのは、“LOVE”の文字を表現した多彩なウェアだ。『エンドレス・ポエトリー』の色彩世界を彷彿させるようなレッドの裏毛スウェットシャツやスカート、パンツなどには、迷彩柄をアレンジしたダメージ加工をプラス。よく見ると、ダメージ部分に“LOVE”のそれぞれの文字を見出すことができるようになっている。
ベルパー定番の波打つようなプリーツパンツにも、グラフィカルなフォントの“LOVE”を大胆にプリント。また、指で絵具をなぞった時のような、かすれたグラフィックプリントのキャミソールドレスやオープンカラーシャツにも、“LOVE”やハートモチーフが描かれている。うねるようなフリルをあしらったスカートは布地の動きとグラフィックがない交ぜになってカオティックな模様に。様々な要素に掻き乱されていく、混沌とした心の動きを連想させるような仕上がりとなっている。
着る人の身体性を強調するようなウェアも散見された。肩パッドをあしらった巻きスカートは、不均一な立体感と不意に現れる穴が独特な表情を生み出している。トップスとしても着ることができ、画一的ではない服と身体の関わり方を見せる。また、あえて胸元だけ透かしを入れたローゲージの天竺ニットドレスや、破れた穴から身体が見えるダメージデニムジャケット、全体にラッフルが配されており、有機的にひだが重なり合うスウェットパンツなども登場する。
同様に身体性の文脈から用いられているシースルー素材も、今季の特徴だ。総レースのトップスは、肩から見頃にかけて大胆にツイストさせており、着ると偶発的なドレープが生まれる。また、ドット柄チュールのオールインワンは、透けて見える肌のリアリティと幻想的な質感を兼ね備えた1着。軽やかな浮遊感もありつつ、薄く全身を覆う生地によって、相対的に生身の実感を得ることができる。