ヨーク(YOKE)の、2025年春夏コレクションを紹介。
2025年春夏シーズンは、ドイツ出身であり、アメリカを拠点に活動した画家ウルフ・カーン(Wolf Kahn)の作品がインスピレーション源。ウルフ・カーンは抽象絵画の1種である「カラーフィールド・ペインティング」を取り入れて木々や花、自然風景などの具象画を制作したアーティストで、大胆な色の組み合わせと、静謐ながらも思わず目を引くような豊かな表現を特徴としている。作品から見て取れる色彩感覚や、描き出されたモチーフの佇まいを、ウェアに落とし込んだ。
印象的なのは、自然光を通して物を見た時のような、和らいだ色彩と、色の重なり。6色の糸を用いたキッドモヘアのジャカードニットは、仕上げに起毛させることで色が複雑に混ざり合っているかのような質感を生み出し、深みのある緑を中心に木々のある風景を表現した。インターシャのカラーブロックセーターもまた、ひんやりとしたブルーや温かみのあるコーラルピンク、淡い若草色などを用いて、穏やかに余韻を残していくような配色に仕上げている。
この他にも、ウルフ・カーンの作品を全面にプリントし、色彩が淡く共鳴し合うようにグラデーションを織りなすシャツやイージーパンツ、褪色した部分にピンクやパープルがほのかに差し込むオーバーダイのデニムブルゾンなどが揃う。
ダイナミックでありながら繊細である、という一見相反するような要素を持ち合わせたトレンチコートやジップブルゾンなどもアイキャッチ。写真家・水谷太郎の作品《淼/びょう》をジャカードに落とし込んでおり、水面に浮かぶ歪んだ波紋のイメージを生地いっぱいにあしらっている。自然の現象を抽象的に写し取っている、という点でウルフ・カーンの作風とも相通じる作品だ。布地のドレープと波紋が相まって、一層独特なうねりを生み出している。
加えて、ミリタリーやワークウェアを基盤とした機能性も散見されたポイント。立体感のあるフラップ付きポケットを身頃に複数配したミリタリージャケットは、袖を取り外してベストとしても着ることができる。また、スモーキーなイエローやペールグリーンのフォトグラファージャケットは、8つものフロントポケットを備え、収納力抜群の1着に。さらに、ウルフ・カーンがドイツ出身であることにちなみ、ドイツ軍の「スノーカモ」柄がベースの刺繍を施したスノーパーカーも登場。スタンドカラーの襟部分にフードを収納できる仕組みで、シーンに合わせて着方をアレンジすることができる。