ファセッタズム(FACETASM)の2025年秋冬コレクションが発表された。今季は、広島県尾道市にある多目的空間「LOG(ログ)」からインスピレーションを得た。
昭和38年築のアパートを改装した「LOG」は、ホテル、カフェ、ダイニング、ショップを併設する複合施設で、旅人と地域の人々が行き交う憩いの場となっている。今季はテーマに「Kind Shelter=親切なシェルター」を掲げ、デザイナーの落合宏理が実際に「LOG」に訪れて肌で感じた“優しくあれ”という精神をデザインに落とし込み、光や風、植物、街との境界を曖昧にする独自の雰囲気を服に昇華させた。
コレクションには、LOGの建築に見られる、曲線を用いたアールデザインの柔らかな“丸み”が随所に反映されている。スタジャンやワークジャケットといったアメリカンカジュアルなアイテムは、膨らみのあるシルエット。ジップは流れるような曲線を描き、リジッドデニムさえも柔らかなシルエットと風合いで仕上げた。
構築的なデザインと再構築の手法を融合させたドッキングスタイルも特徴的。たとえばスタジャンとボアコートをハイブリッドしたアウターは、身頃はスタジャン、袖と裾はボリューム感のあるボアで構成。折り重なるようなフードと大きいポケットをあえてざっくりと配置した。
また今季も、同サイズであればシーズンを越えて自由にドッキング可能な仕様を継続。ニット、コットン、ナイロンといった異素材のミックスや、ジップを調整して背中を開放するレイヤードなど、着る人のアイディア次第で自在にコーディネートできる。
LOGの各スペースの壁に飾られている114の“カラーレシピ”から着想を得た1着は、ローブのようにゆったりとしたシルエットに、コーデュロイの柔らかさが重なり、温もりのある仕上がりだ。ランダムでありながら調和の取れた配色が際立ち、まるでアートピースのような存在感を放つ。
カラーパレットは、チャコールに近いブラックやニュアンスのある落ち着いたトーンをベースに、アクセントとして尾道の夕日を思わせるオレンジや、尾道水道を映すブルーを採用。情緒ある風景の色彩を落とし込むことで、穏やかで味わい深い表情に仕上げている。