スタンスミスの復活やストリートファッションの流行などもあり、まだまだ熱は収まりそうにない近年のスニーカーブーム。そんな中アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)の2015年春夏コレクションには、あえて「スニーカー」を題材にしたクリエイションが登場した。一般的にドレスダウンとして用いられてきたスニーカーが、ドレスアップの材料になる、というブームを逆手に取ったような意味合いとともに。
そんなユニークなテーマだったが、その難題を、ワンは思いがけずシンプルな手法で実現した。それはスニーカーのエッセンスに、1930年に活躍したデザイナー「マダム グレ」の作品から影響されたというシルエットやドレープをミックスし、ドレッシーなアイテムをつくるというアプローチ。ロングドレスやミニドレスからブルゾン、シャツ、バッグまで、ショーに現れたアイテムからは、どこかで見たようだけど思い出せないといったふうに絶妙な案配で、スニーカーっぽさが醸し出されている。
ファーストルックから目をひいたのは、スニーカーのタン裏にあるようなバーコードをモチーフにした、ウエスト部分のデザイン。続けて、ランニングシューズを思わせるようなメッシュ×ネオンカラーのミニドレス、モノトーンのロングドレスのルックへと流れていき、スニーカーのアッパーを模したようなレザーのトップスやドレスが現れる。
そして終盤、ショーは美しいグラフィックの世界へと歩みを進める。ソールを拡大したような幾何学模様、靴ひもを思わせる流線型などを自由に組み合わせて生まれるパターンが、ネオンカラーやグラデーションで変化し、ブラックのドレスやトップスをスポーティーに彩る。またブランド人気のバッグには、アウトソールに用いられるエアーを搭載した「スニーカークラッチ」「スニーカーバッグ」「スニーカーバックパック」といった、いつものシンプルなデザインとはひと味違うアイコニックなモデルが次々と登場した。
その一方で、コレクションの足もとにスニーカーが登場することは最後までなかった。現れたのは、カラフルなゴム編みのパンプスと、メッシュを使用したパンプス、無駄をそぎ落としたストラップサンダルのみ。シューズをウェアに、カジュアルをドレスに、という逆転の発想から生まれたコレクションだったが、最終的にはあくまで“着られる”形になり、エッジの効いたウェアとしてショーを彩った。