シシオ(SISIO)の2025年秋冬コレクションが、2035年3月25日(火)、東京・国立代々木競技場 代々木第二体育館にて発表された。テーマは「Anitya 諸行無常」。
2018年、中国人デザイナーのシャーロット・シャオによりニューヨークにて設立されたブランド シシオ。中国の“陰”と“陽”の概念をデザインフィロソフィーに持ち、伝統工芸や文化などを取り入れながら、アバンギャルドな手法にて表現している。
そんなシシオが、日本で初のランウェイショーを開催。テーマは、サンスクリット語で“無常”を意味する「Anitya」、そして日本語で「諸行無常」。この世の万物は常に変化し、風の中のこだまのように儚く消えゆく。のぼるものは衰え、生まれるものは枯れる。つかむことは苦であり、手放すことは理解すること、永久不変なものはないのだという、無常の真理を説いた仏教の教えだ。このテーマを掲げたのには、2025年3月、シャーロットの愛犬が永眠したことが背景にある。生きていれば耐え難い苦しみもあり、命は消えゆくけれど、愛は決して消えないのだということを、諸行無常の教えと共にコレクションの中に落とし込んだ。
印象的なのは、花びらを思わせる自由なシルエットを採用していること。大ぶりの花びらを重ねたようなボリューミーなドレスや、花開いているかのような大きな襟、ジャケットに取り入れた膨らみのある裾など、意思が感じられるように生き生きとした動きを見せる。トップスを横断するフリルは、片腕が花びらの中に納まっている様子を彷彿とさせる。
花に関連して、“移り気”、“忍耐強い愛”といった花言葉を持つ紫陽花をモチーフにしたルックも。コルセットのようなディテールを採用した上部に、紫陽花を敷き詰めたスカートを合わせたドレス、枠組みに紫陽花を等間隔に取り付けたクリノリンなど、古典的なドレスのシルエットを取り入れた。
過去のコレクションで、ブルース・リーの水に対する「友よ、水になれ」という哲学をもとにしたドレスを手掛けたシャーロット。まるで水しぶきのように豪快なシルエットやクリスタルビーズ、波模様などを通して、水の柔らかさや力強さなどを表現した。今季も、そんな水にインスパイアされたピースが数多く登場。特に、ビーズやフリンジを用いた煌びやかなドレス。波を連想させるフリルも相まって、ドレスの中に水の存在を感じることができる。
カラーパレットの大半をブルーが占めつつも、ひとつの色に留まらない、あらゆる色彩が混ざり合うような色使いは、諸行無常が説く儚さを表す。波紋による水の揺らめき、移り変わる空の色など、色の変化が感じられる淡いグラデーションカラーが、ドレスやトップスを優しく彩る。
シシオらしく、中国の民族衣装チャイナドレスを現代風に解釈したルックも披露。ボディラインを強調する女性らしいシルエットやチャイナボタンなどはそのままに、前後で異なる丈感に設定したサテンのドレスに、ふっくらとしたオーガンジーのドレスをレイヤード。中国の伝統的な衣装と、洋風ドレスの要素を織り交ぜた。