ファクトタム(FACTOTUM)が2015年春夏コレクションを発表。「Various Life」をテーマに掲げた今シーズンは、ロイ・アンダーソン監督の69年の映画『A Swedish Love Story』に着想を得た。70年代を象徴する柄やスウェーデンにまつわる柄を、監督へのインタビューを聞く中で閃いた想いとともに、モーターサイクルやミリタリーといったスタイルに落とし込んだ。
会場にはスタート前から『A Swedish Love Story』のサントラや60、70年代のノスタルジックな音楽が流れていた。しかしショーが始まると一転、音楽はロック調に。ファーストルックで登場したのは、胸元がかなりゆったりしたニットにMA-1を合わせたモデル。60年代のトラッド的な要素と70年代のロックやミリタリーが解け合ったような印象を受ける。そこからしばらくはペールトーンでまとめたライダースやスウェットを取り入れたスタイルの連続だ。ジップをシャツやジャケット、パンツなどに使うことで機能的な一面も。70年代を象徴する花柄やストライプ柄も見え、懐かしさも覚える。
中盤になるとペールトーンからカラーは一気にビビッドに。ポップアートのようなカラフルな柄は、スウェーデン軍のカモフラ柄をデザインに落とし込んだもの。トップスから薄手のジャケット、スカーフまで様々なところに登場する。そこにレザージャケットやデニムを取り入れて、リアルクローズでも着れるスタイルを提案する。
後半はダークトーンを中心にショーを展開。先ほどのカモフラをジャカードで陰影を付けて表現したスタイリッシュなブラックのコートやジャケットも登場する。実はコレクション内に登場するカモフラ柄には、スウェーデンの“ザリガニ祭り”をモチーフにしたザリガニが隠れているのだとか。
「自分らしさ」をキーワードに掲げたデザイナーの有働幸司。フィナーレもモデルたちが自身で選んだ、対照的な意味が描かれたTシャツを着て登場。渋谷のスクランブル交差点を歩くかのように、ランウェイを自由に闊歩する。デモや革命が世界各地で起きたりする不安定な今だからこそ、「自分らしさ」を忘れずに歩いて欲しい。そんな思いがコレクションを通して伝わってきた。