フェンディ(FENDI)の2015-16年秋冬は、都会で生きる忙しく働く男たちに向けたコレクションだ。まず印象的なのが、コーデュロイ素材やコーデュロイに似せたレザー、ストライプ柄などによる“縦の表現”だ。グレーのスーツに使われたコーデュロイは、極太の“鬼コール”で、畝幅が1cmはあろうかという代物。ベルベットのような高級感と温かみがあるスペシャルなテキスタイルは、スーツに新しい表情を加えている。
ポケットやガンフラップの端をトリミングしたトレンチコートは、遠目では縦畝のコーデュロイのように見えるが、じつはシープスキンをコーデュロイ風に加工したもの。ロング丈のムートンコートは、通常では裏側となる部分を表に使い、さらにストライプの細工を施している。ピーコートやパンツのストライプもピッチ幅が5cmはありそうで、「幅の広いストライプ」は今回のコレクションのキーワードになっている。
シグネーチャーのレザーアイテムも、様々な新しい提案が成されている。パッチワーク風に色分けした毛足の短いファーのブルゾン、アウトドアブランドのフリース風のデザインのムートンブルゾン(フリースのモコモコ感をムートンで表現している!)、「バッグ バグス」のキャラクターを切り替えやファーで表現したブルゾン、お腹の部分のみがファーになったニット(おそらくニートルパンチで繋ぎあわされている)など、レザーに長けたメゾンならではの技と遊び心を感じさせるアイテムを並べた。ブラックのスウェットシャツには、肩章の部分にファーをあしらっている。
スーツは70年代のフレーバーをモダンにアレンジしている。ジャケットはボックスシルエットで丈は短め。パンツは裾にかけてゆるやかにフレアする優美なラインを描く。テキスタイルは細畝のコーデュロイ、ビッグピッチのストライプのウール、パッチワークのツイードなどだ。
バッグでは、機能的なファーのリュックに注目されたし。メインの収納が3つに分かれていて、一番外側の部分にはサッカーボールを収納。バッグの横にはリンゴをモチーフにした可愛らしいアクセサリーが、下にはヴィンテージのバックパックのようにブランケットが括り付けられている。デザイナーのシルヴィア・フェンディはプレスリリースの中で、このバッグについてこう述べている。「ランチを取る間も休息できないほど忙しい男たちのためにデザインしたの。かれらに必要なのは、公園で休むためのブランケットと童心に帰れるサッカーボール、そして美味しいリンゴよ」。両サイドにポケットが付いていて、首に巻くとポケットに手を入れられるビッグサイズのマフラーも、彼女の“愛情”が感じられるアイテムだ。
カラーパレットは、ブラウン、ベージュ、グレー、ブラックをメインに、ワインレッドとグリーンを挿している。今シーズンのミラノではブラウン系がトレンドに浮上しているが、その中でもフェンディのベージュ〜ブラウンのカラーパレットの美しさは特筆に値する。ラグジュアリー感はそのままに、ぐっとモダンに進化した印象を受けた。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)