コスチューム ナショナル(CoSTUME NATIONAL)がミラノで発表した2015-16年秋冬コレクション。
これまでを一度リセットするーー。デザイナーのエンニョ・カパサが、今回のコレクションにこめたのは、そうした思いだった。そしてその主題を考えるヒントとなったのが、終わりと始まりが重なる時刻。深夜0時0分だ。
ショーでは、まるで深夜に満ちる闇夜をまとわせるかのように、ダークトーンに絞ったウェアが展開される。そのほとんどは黒一色であり、時折現れるのが、深いネイビーと、ブラック×グレー。もともとワンカラーのコーディネートを好むブランドではあったが、抑えたカラーリングでより一層ミニマルな印象を残していく。
無駄をなくした分、エッジの効いた力強いムードが強調されているのも特徴的だろう。ゆとりのあるマニッシュなライダースに、丈を長めにとったジャケット、タイトなスラックスやレザーパンツ。そうしたロックの影響が見えるアイテムは、シルエットの美しさ、ディテールのデザイン、透け感や光沢のある素材などがポイントになる。ダークなカラーリングの中でよく映え、アイテムは輝きを増していった。
コスチューム ナショナルは、90年代にそのミニマルなスタイルでブームを巻き起こしたブランドだ。その一方で今季のコレクションのように、モードの文脈としてタイトなロックスタイルを取り込む動きは、サンローランを筆頭に高まりを見せつつある。ふとここで、一つの疑問が湧く。リセットがキーワードになった今シーズン以降、新たにどういった流れが生み出されていくのだろうか、と。それとも、単に今回ルーツに立ち返ったというだけなのだろうか。答えは次のシーズンまで、深夜の闇に包まれたままになっている。