アンダーカバー(UNDERCOVER)が2015-16年秋冬コレクションを、パリで発表した。
会場に足を踏み入れると、そこには荘厳な装飾が施された、ドーム型のホールが待っていた。中央には大きなシャンデリアがあり、席からは白いランウェイによって描かれた三角形が見える。しばらくすると、そのランウェイ上へ、強いライトの光が伸びた。ホールにはピアノの旋律が響く。奥からゆっくりとモデルが登場する。ショーが始まった。
それからすぐ、会場にいる誰もが、見る光景に違和感を感じ始めたことだろう。なぜなら、現れるモデルたち全員が、どこか不自然な笑みを浮かべているのだ。その理由は、近くを通った時ようやく分かる。顔の半分もしくは全体に、透明の矯正マスクを装着していたから。頭によぎる。これは一体、何を意味するのだろうか?と。
ベルギー出身のシュルレアリスム画家、ミヒャエル・ボレマンス。不可解な作品群で知られる彼だが、あの透明のマスクは、ボレマンス作品の中に登場するものだ。そしてトップスやコートにプリントされている、鼻が黄色くなったり目から線が飛び出した少年、手を後ろで組まされたおさげの少女もまた、ボレマンスの作品。こうした奇妙な絵画のグラフィックは、観るものを独自の世界観に引き込む、大きな役割を果たしていたと感じる。
それからコートの背中の、オーガンザ素材の下から透ける、鮮烈な薔薇のグラフィック。ラストルックをかざったコートやパンツについた、散り散りになったガラスの破片。これらもまた、意味ありげにたたずみ、そして強烈なコーディネートのポイントとなった。
もちろんそのほかにも、今季を象徴するようなデザインは多く現れた。ライダースやスタジャンなどブルゾンに取り入れられたのは、背中と両袖に大きなゆとりを持たせたシルエット。ドレープのあるベロアの生地は、アウターへ複雑に絡められた。ジャケットやパンツを一度解体し、再構築したコートやジャンプスーツも、その一例だろう。