アニエスベー(agnès b.)がパリ・ファッションウィークで発表した、2015-16年秋冬コレクション。
壁中に落書きのようなペイントがある、地下へと続くコンクリートの階段を降りていくと、開けた会場へ出た。設けられたステージには、ドラムやギター、アンプなどのバンドセットが置いてあり、その奥のスクリーンには、通路で見たようなペイントにも似たグラフィックが映し出されている。もしかすると、今季はストリートのテイストが強く押し出されるのだろうか。そんな予想が頭をよぎる。
しばらくして、鳴り続いていた音楽が消えると、会場が静まり返った。すると会場には、女性の歌声が響きはじめる。その時奥からランウェイに現れたのは、双子デュオ「IBeyi」。今季のスタートを飾ったのは、彼女たちによるアカペラのハーモニーだった。
ショーが始まると、先ほどの予想はあっさり裏切られることになる。確かにストリート色の強いスタイルはあったのだが、それはカラフルなパーカーなどごく一部。様々なエッセンスが混ざりあって、コレクションを形作っていたのだ。アートに、ナチュラル、ロック、ワーク……。それは挙げればきりがないほど。
ただ、その多様性に富んだコレクションの中でも、とりわけマニッシュなイメージは、共通項として見いだせるかもしれない。例えばオックスフォードやラバーソールなど、シューズはフラットが基本であるし、ボーラーハットや4つボタンジャケット、プリントを施したジャンプスーツも登場する。フランネルのチェックシャツ、バッファローチェックのコートもまた、やや無骨な印象だ。
そんなショーは、無地のコットンやウールを用いたナチュラルなムードではじまり、最後はグラフィカルなアート作品を落とし込んだエッジィなムードへと変化していった。もちろん途中には、ブランドお馴染みの、写真を全面に落とし込んだドレスやカットソーも現れる。中盤からは、バンドのライブパフォーマンスもあり、音楽、アート、服、全てが重なる、密な時間が演出された。