ダンヒル(dunhill)の2016年春夏コレクションは、英国紳士がワードローブの中で、最もフォーマルなファッションに取り入れる独自のひねりをテーマにしている。英国王室がファッションに対してのしきたりと共に受け継ぐ、粋なアプローチがコレクションに色濃く反映された。
ファーストルックを飾ったのは、モーニングコートが格式高さを漂わせるコーディネート。一見真正面からの正装のようにも思えるが、胸のコサージュやきらびやかなネクタイ、さりげないアクセサリーなど、遊び心が散りばめられている。
それぞれのコーディネートは、どれも着ている情景が思い浮かぶ。1つの無機質なランウェイを飾る服には思えない。ブラウンのダブルブレストコートを纏い、首元を覆うようにスカーフを巻いたルックは、まだ肌寒いロンドンの朝方、遠くへ仕事に向かうために駅へ歩いているようなストーリーが見える。
それぞれが一定の格式を持ち、そこに生活や風土に根ざした一捻りを加えている。帽子のかぶり方や幅の違うチェックの合わせ方、裾のしまい方やバッグの大きさ。アイテム各々が持つ力を掛け合わせながら、自分にあったメッセージを洋服に乗せ、“おしゃれ”を楽しむ英国紳士の様子が、見て取れるシーズンとなった。