モスキーノ(MOSCHINO)が、2016年春夏メンズコレクションをイタリア・フィレンツェで発表した。ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)のデザイナー就任以来、初となるピッティ・ウォモ(Pitti Uomo)でのショー。キーワードとなるのは“インパクト”だ。
ファーストルックが現れた瞬間、すでにジェレミーらしさは炸裂していた。「UOMO」「MOSCHINO」「TOY」そんなワッペンがたくさん付いた、MOTO GPのレーシングウェア風のセットアップに、王冠やスニーカーを合わせた、あまりに奇抜なスタイルでショーはスタートしたのだ。ただ、その大きなインパクトは序章に過ぎなかった。時間が経つにつれ、コーディネートはさらに存在感を増していくことになるのだから。
序盤のレーシングウェア風スタイルに続いたのは、豪華でゴシックなスーツのスタイル。そこから花柄をちりばめたジャケットやバッグが現れ、次にアニメキャラが描かれたパステルカラーのコーディネート、そして最後は目がくらむほどにビビッドなパーティスタイルへとショーは流れていく。
そして、そのどれもが「ノーマル」とは正反対の方向に向かっている気がしてならない。例えば頭にトロフィーをかぶりながらスパッツを履いたり、花柄のライダースとスキニーパンツにファーを合わせたり。シャツとパンツをオーガンザ素材で統一し、ブリーフショーツをすけさせているのも、ジェレミーの自由な発想だからこそできる技なのだろう。
しかしそんな今季のショーも、一つの言葉で表すことができるかもしれない。「コスチューム・ミックス」。なぜなら一見まとまりのないように見えるコレクションは、様々な要素(=コスチューム)から成り立っているのだ。先ほど触れたMOTO GPのレーシングウェアはもちろんのこと、俳優フレッド・アステアの端正なモーニングコートや、映画『ステイン・アライブ』のマッチョなゴールドブリーフ、ジミ・ヘンドリクスが好んだフリルのステージ衣装……挙げればきりがないけれど、アイコニックなもの同士を組み合わせて、エッジィに仕上げるという意味では、終始一貫していたのではないだろうか。
モードの世界ではこれまで、相反する要素を組み合わせることで、意外性・独自のバランスを狙うといったアプローチが多く用いられてきた。そうした中、モスキーノのデザインには、2項対立という考えさえ感じられない。関連性がないもの同士ををくっつけて、どこにもないものを探し当てていくその姿勢こそが、アイデンティティなのだ。