ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)は、2016年春夏コレクションをフランス・パリで発表した。
ファーストルックは、ブラックのセットアップスーツのシンプルなスタイル。ジャケットはいつもよりコンパクトなシルエットのシングル3つボタン。ジャケットの脇やパンツのクリース部分は生地が切り替えられていて、両端は丁寧にパイピングが施されている。靴はアディダス(adidas)のカントリーをベースにしたコラボレーションモデルで、紐の部分をレザーで覆い、ジッパーで開閉できるようになっている。モデルの片目と頬には、イエローとレッドの縦線が意味有りげに入っている。
4人目のモデルは、ヨウジの顔となりつつある栗原類。Vネックの変形ヘンリーネックシャツにレザーをストライプ状に縫い付けた鋭角的なカッティングのベストを重ね、サスペンダーを垂らした極太の袴パンツを合わせている。コレクションを通して見られる“縦線”の表現は、今回のコレクションのキーワードとなっている。
中盤にはブラックスーツの箸休めのような形で、即興でペンキを塗り付けたようなスーツが登場。足元にはオープントゥのブーツやキャンバスのスニーカーを合わせている。その様は作業の途中で抜け出してきた画家のようだ。
後半は、スカーフと立ち襟のシャツでドレスアップしたブラックスーツの他、ヘムが切りっぱなしになったベージュのリネンのセットアップスーツ、ボタニカル柄のスーツ、シワ加工のストライプスーツなどを見せた。
ラストは、音楽がフランス・ギャルの『夢見るシャンソン人形』に切り替わり、イラストを配したジャケット、シャツ、Tシャツの行進。Tシャツにプリントされたパンツにハットを被った山本耀司の自画像は、山本自ら描いたもの。そこに、「I'm for rent」というワードが添えられた。その後は、若手アーティストのコラボレーションした、ギターを弾いたりや愛犬を連れて散歩するイラストは、自らの日常を描いたのだろうか? 夢見るシャンソン人形の歌い出しを日本語に訳すと「私は蝋人形、音の出る人形」となる。その歌詞を自らに重ねたのかどうかは分からないけれど、最後に現れた巨匠は相変わらず生気に満ち溢れていた。作品もまた然り。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)