sacai(サカイ)は2016年春夏で、様々な要素(時代、素材、パターン、スタイル)を自由な発想でミックスしたハイブリッドなコレクションを提案した。
最初に登場したのは、チェックのアイテムが主役。ハンティングウェアなどに用いられるレッド×ブラックのブロックチェックのMA-1やコートは、通常は重たいウール素材だが、これらはその雰囲気を残しつつ軽やかなメッシュ素材で製作している。パッチワークのように見えるパーカーシャツは、マドラスチェック、ギンガムチェック、ブロックチェックをひとつのテキスタイルで表現。そのインナーにライダースジャケットをインする感覚は、sacaiならではのセンスだ。
ミリタリーやアウトドアの要素もコレクションの中に混在している。民族調のケープの下に着ているボタン使いが可愛らしいミリタリージャケットは、スウェーデン軍のミリタリーウェアからサンプリングしたもの。ネイビーのセットアップスーツは、内側にレイヤードしたように見えるラペルにフリルを重ね、ミリタリーをエレガントに昇華している。ブルーのレザーヨークとベージュのナイロンの組み合わせのマウンテンパーカー、ダウン風ベストは、70年代のアメリカのアウトドア・シーンを想起させるものだ。
ハイネックが主体のシャツやカットソーのデザインもキーワードのひとつ。フラダンスのレイ(首飾り)のようなネックピースとともに、スタイリングに華やかな印象を加えている。民族調のニットは、ペルーの伝統的なジャカードにインスパイアされたもの。ケーブルや畦編みなどの複数の編み地を組み合わせたパッチワークニットも目を惹く。
ヌメ革のシューズは、柏崎亮が手がけるエンダースキーマと共同制作したもの。アメリカの永世定番的存在のワークブーツとスポーツサンダルにオマージュを捧げたもので、アッパーには植物タンニンなめしのカウスキンとゴートスキンを使用している。日本が世界に誇る両ブランドの意外性のあるコラボレーションは、世界中のショップの間で争奪戦になるに違いない。
Tシャツにプリントされた「Paradise Garage」のモチーフは、伝説的なDJ、ラリー・レヴァンを輩出したNYの伝説的なディスコのロゴ。DJという文化を育んだ象徴的な場所をサンプリングすることで、“音源”をミックスするDJと“服源”をミックスするハイブリッドを重ねあわせたのだろうか? いずれにせよ、阿部千登勢は2010年代の日本が誇る世界でも有数のファッション界の“DJ”であることは間違いない。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)