ロエベ(LOEWE)が2016年春夏メンズコレクションを発表した。
現代的なポップ感と、自由を追求した先のファンタジー。今シーズン、デザイナーのジョナサン・アンダーソンがコレクションで表現したのは、「日本への旅」だ。来日の際に東京で見た、ハイテクやポップカルチャー、スパークルな光に心を動かされたというジョナサンは、日本人にとって馴染み深いモチーフを、さらりとモードの文脈に乗せコレクションへと仕上げた。
その中でもまず目を引くのが「パジャマルック」ともいうべきスタイルだ。まるでパジャマのようなシルエットやデザインを持つセットアップには、よく見ると漫画のコマが落とし込んであり、さらに個性的な出で立ちへと押し上げている。とはいえ、まんまパジャマではなく、袖やパンツの裾をフレアにすることで、ジョナサンらしく流れるようなシルエットに仕上げ、モードな匂いも忘れずまとわせている。
そして「漫画」はもちろん、日本人にとっては「日本語」が使用されていることも気になるはず。バックルが「友」の文字になったベルトや、あちこちに「開発スタート」の文字が書かれたアイテムは、見ただけで、思わずあっ、と声が出そうになるほどユニークなデザインだ。
その一方で、単に「日本的」イメージに終始していないのもポイントだろう。実は今季、ロエベは50〜60年代のSFからも影響を受けている。バッグには宇宙船やロボットが無秩序に描かれているし、これまたロボットなどが描かれたノーカラーのセットアップは、どこか戦闘員の制服を思わせる出で立ち。シースルーのジャケット、シルバーのスニーカーも、あのころ描かれたような、近未来への憧憬を連想させた。
このように話題が満載だった今季のロエベ。しかしだからと言って、特別アイデンティティが変わったわけではなく、一目見れば確かにロエベだとわかる。それは、真っ白な折り返しのデニムトラウザーといった定番アイテムや、Aラインを描くシルエットなど、いくつか要因があるのだけれど、その本質は誰も見たことのない「新しさ」なのだろう。そしてそれは、もしかすると彼の「少年のような好奇心」に依っているのかもしれない。そう思わせる、自由で刺激的なコレクションだった。