ヴィヴィアン・ウエストウッド レッドレーベル(Vivienne Westwood Red Label)が、2016年春夏コレクションをイギリス・ロンドンで発表した。ファッションという手段でこれまで世界に大きな影響を及ぼしてきたヴィヴィアン・ウエストウッド。彼女は、今季のショーの中に人間が生活を営む上で常に提唱されてきた哲学的議論を潜めた。
提案されたのは、官能的な要素を交えたエレガントなスタイル。ドレープの効いたドレス、大きく胸もとがあいたブラウス、コンパクトなビスチェなどを繰り返し登場させた。各ピースだけでなく、パンツやスカートにタックインしたスリムなシルエット、ジャケットと緩いパンツのセットアップのコーディネートにも女性らしさを濃縮している。すべて、人を美しく見せる方法を知り尽くした彼女だからこそできるワードローブである。
ワンピースには、細かくスラッシュを入れたり、抽象的な模様を入り乱れさせたりして。ジャケットは、肩を強調してメンズライクに仕上げることで、コーディネートにエッジを加えた。アバンギャルドな要素を垣間見せながらも、シンプルなスタイリングを構成している。
今季の比較的ミニマルなワードローブによって、人間がこれまで問い続けてきた「豊かな暮らしとは何か?」という課題が考察された。彼女が考える「豊かな暮らし」とは、世の中を反映するもののひとつ。そして、人々はそれを映し出す鏡のかけらのようだという。なぜなら、人は文化やアートを通して世界のすばらしさを理解し、己の才能や能力、関係性を読み解く。そのうえで、暮らしを豊かにするために最善を尽くそうとするからだ。
だからこそ人は美しい。ヴィヴィアン・ウエストウッドが表現したのは世の中を反映するファッション、そしてそこにある“人間の美”であるのだろう。