アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)がアメリカ・ニューヨークで発表した、2016年春夏コレクション。
アレキサンダー・ワンと言えば、かつて「ストリート・ゴス」を提案していたブランド。しかし徐々にそのスタイルからは脱却し、多様性を増しつつあるのではないかーー今季のコレクションには、そう思わせる部分が少なからずある。そもそも「ストリート・ゴス」とは、スポーツウェアから派生したストリートスタイルに、モノトーンを基調としたゴシックの要素を掛け合わせたスタイルのこと。片鱗はまだうかがえるものの、ある意味では大きくデザインの幅を広げたシーズンとなった。
そんな今季コレクションのモチーフを一言で表すなら「デイリーウェア」だ。パーカーにカーゴパンツ、トレンチコート、デニム、そしてパジャマ。モダンに、そして緻密にデザインされたアイテムの数々は、よく見るとワンの得意とする「モード」や「ドレス」とは対極にある、日常的に着用されるワードローブに端を発している。日常着をデザインの「素材」ととらえ、自由にひねりを加えていくことが、コレクションの中にオリジナリティを生むキーとなっているのだ。
例えばダメージのあるデニムショーツの内側にはパジャマ生地がレイヤードされているし、ミリタリーコートやロングドレスにはウエスタンジャケットを思わせるひだの装飾をプラス。ジーンズは解体され、スカートやストライプパンツとなった。スウェット生地で立体的なドレスを作り上げたり、インナーやレイヤードとしてメッシュ素材を多用するなど、得意とするスポーツのエッセンスも随所に取り入れられている。
そして、そうしたミックススタイルは、エッジィなアイテムによってモードなスタイルへと集約された。特に目立ったのがブラックレザーとスタッズだ。ブラックレザーはバイカーパンツやクロップドトップスとして登場し、スタッズはサンダルやバッグに大胆に取り入れられる。コーディネートを引き締め、シャープなイメージを与える役割を果たしていた。