リック・オウエンス(Rick Owens)が、フランス・パリで発表した2016年春夏コレクション。
ファッションウィーク中は、数多くのブランドが日々最新コレクションを発表している。そのせいか、話題性という名の寿命は短く、翌日まであるいはファッションウィーク終了時まで、名前が挙がるブランドは多くない。リック・オウエンスは、数少ないニュース性のあるデザイナーの一人である。数か月前のメンズコレクションでのニュースも記憶に新しい。
今季の会場は、パレ・ド・トーキョー地下にある、コンクリートがむき出しになった空間。ショーもこの雰囲気とリンクし、乾いたような質感と、カーキやベージュといった無機質なカラーリングが中心となる。
昨シーズン同様に、硬質感のあるドレープがポイントで、ワンピースやカットソーの上をうねるように造形されている。また、つまみ出したような突起物、部分的に差し込まれたメタリックカラーなど、不自然さと違和感を奏でる要素は、羅列しはじめるときりがないほどだが、こういった洋服の印象は薄い。というのも、斬新な発表形式が、脳裏に焼き付いて離れないのだ。
今季のサプライズは人。ウェアを見せるはずのモデルが、これまたウェアを見せるはずのモデルをおんぶにだっこ。前後に背負われたモデルは、逆さまになったり、手足をバタバタさせたりしながらも、歩いているモデルに張り付き一体となっている。そのパフォーマンスが繰り返されるほどに、四肢動物であるという人間の当たり前の概念から逸脱し、新しい生命体の誕生のようにも見えてくる。
度肝を抜かれる演出ではあるが、ショー終了後には参列者からリックへのラブコールは鳴りやまない。コアなファンの期待を裏切らないところは、リック・オウエンスが常に話題の中心にいる一つの理由であるのかもしれない。