ヴァレンティノ(VALENTINO)は、2016-17年秋冬メンズコレクションを、フランス・パリで発表した。
今シーズンのコレクションの着想源は、登山家のジョン・クラカワーのノンフィクション作品「Into the Wild(荒野へ)」。青年がアラスカ山脈の荒野を旅するストーリーにインスパイアされたデザイナーの2人(マリア・グラツィア・キウリとピエールパオ ロ・ピッチョーリ)は、“美を検査する旅”を敢行。アメリカの大地を感じさせるネイティブ・アメリカンやアウトドアの要素と、正反対のイギリスのパンクの要素を融合させ、ワイルドでありながら品のあるスタイルを紡いでいる。
ショーはブラックを主体としたミニマルなスタイルで幕を開けた。主役はダブルカシミヤの贅を尽くした素材のアウター(チェスターコート、ピーコート、ダブルブレストジャケット)。こうしたオートクチュールピースに、パジャマスーツやフレアパンツなどを合わせて、肩の力の抜けたラグジュアリーを表現している。
6ルック目から、テーマを反映させたネイティブ×パンクなピースが登場する。チェスターコートやブルゾンには、ネイティブ・アメリカンのパターンのスタッ ズを配置。厚手のチェックのウールコートの襟元には、パンキッシュな太ベルトが声高に主張している。タイダイ調に染められたレザーブルゾンは、ビーズや蝶 の刺繍でデコレート。ブランケットコートは、デニムを前立てや腕ポケットに加えることでモダンに調理している。
内側を豪華にアレンジしたミリタリーも外せない。イギリスのモーターサイクルコートのディテールを引用したコートは、インナーにゴージャスな2種類のファーを配置。スウェーデンの寒冷地用コートは、内側のムートンと襟のファーを現代的にアップデートさせている。アウトドア風のアイテムもふんだんで、ブロックチェックやパッチワークのハンティングコート、星柄のレザーヨークを配したブロックチェックのシャツジャケットなどを提案した。
こうした土臭くも華やかなアイテムを引き立てるのは、リアルなユーズド加工のデニム。ダブルニー風のペインターパンツ、腿周りがゆったりしたスリム(裾は多めに弛ませる)、スタッズを全面に飾ったウエスタンシャツなどを披露した。小物で目立つのは、リングで留めたバンダナ風のスカーフ、ベルト部分に刺繍を施したショルダーバッグとバックパックなど。シューズは、パッチで装飾したエアソールの編み上げブーツ、コバをスタッズでトリミングしたプレーントゥとローファー、ランニングシューズタイプのスニーカーだ。
プレスリリースには「スタイルのメティサージュ(交流)は、ルーツの融合から生まれる」と書いてある。さよう、アメリカの先住民族とイギリスのユースカルチャーのフュージョンは、新鮮な驚きに満ちあふれていた。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)