クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)は2016-17年秋冬コレクションを、フランス・パリで発表した。パリでの発表は4シーズン目だが、サンディカ(パリのファッション組合)の公式スケジュールになったのは今回が初。着席150人程度の小さな会場で、より進化した“ダダイズム"を披露した。
目玉は、写真家の荒木経惟とのコラボレーション。荒木が病気で失明した後のシリーズ「左眼ノ恋」にインスピレーションを受け、エロティックな作品をストレートに落とし込んでいる。ストライプのウール地のカバーオールは、右前身頃と右腕にに女性の臀部がコラージュされていて、左目で作品を撮り続ける荒木の今を表現している。 ライダースジャケットやコートに大胆に刺繍された花束も、かれの作品の引用だ。
全体的には上半身をややゆったりめで、下半身をワイドにした表現が目立つ。ブランドのシグネーチャーであるライダースジャケットは、少し肩の落ちたリラックス感のあるサイズ感で、革も薄手で上質なものを使用している。ハイウエストやダブルウエストのワイドパンツは、裾にスリットが入っていて、引きずるようにして歩く。
また、今シーズンはムートンがトレンドに浮上しているが、ネイビー×ブラックのB-3型のフライトジャケット、パンツの上に重ねて穿くオーバーパンツ的なムートンパンツを提案。トレンドに寄り添っているわけではないが、旬の情報をしっかり掴めている様子が伺えて、頼もしさを感じさせる。ウエストで締める縄や極太のベルトは、アラーキーの作品世界を感じさせる小道具で、絶妙のアクセントになっている。
荒木は1940年生まれで、森川は1984年生まれ。親子以上に年の離れた2人の共通点は、唯一無二の世界観を持っていること。相性が悪いわけがない。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)