ヴァレンティノ(VALENTINO)が2016年春夏オートクチュールコレクションを発表した。
コルセットからの解放を示唆したマリアノ・フォルトゥーニが生み出した「デルフォス」が今シーズンのソース。それは、しなやかなドレープとプリーツ、そして丈が長く、歩をすすめれば美しさの余韻とともにトレーンをひくモダンなドレスであり、女性を自由に導く絶対的表現である。
コレクションのキーワードは「バーティカル」と「エアリー」。一見、空気のように軽やかなスタイルだが、ディテールをみると世俗的な要素が色濃くなる。ベルベットは、ボロボロに使い込んだような加工が施され、手作業で施したプリーツは繊細で滑らか。パッチワークは、織り模様やアニマル柄、ハンドペイントと多種多様。ファブリックの中にはマリアノ・フォルトゥーニとのコラボレーションから生まれたものも提案されている。
澄み切ったオリエンタリズムと高貴なビザンティンスタイルの要素を取り入れながら、時折見せたジャポニズムの交錯。着物スタイルのコートやローブには、鯉や竜が描かれた。一方で、カラムドレスの曲線美はエンブロイダリーを取り入れることで、深みが追求されている。ふわりと揺れるチュール、随所にキラキラと輝く刺繍たちが儚げに賛美を奏でた。
マリアノ・フォルトゥーニの作品の前では、永遠に感じるような錯覚に陥るが、それは今回のショーも同じ。時がとまったかのようなショーは私たちを魅了して止まないものであった。