2011年10月21日、ジュンヤ タシロ(JUNYA TASHIRO)が2012年春夏コレクションを発表した。10回目となる今回は、テレビドラマ化もされた沙真(サチカ)の小説「私は1本の木に恋をした」とのコラボレーションとなっている。鳥の愛らしいハミングが静まりスポットライトが明るく照らし出せば、ランウェイは物語の舞台である「謎の森」へと姿を変えた。
まず目に飛び込んでくるのは、デザイナー田代淳也が「バカピンク」と称した鮮やかなショッキングピンク。それはタイツ、ヘアカラー、上気したようなピュアなチークなど、随所に散りばめられて全てのルックでアクセントになった。これには田代の「ナチュラルな要素を従来のイメージとは違った見せ方をしたかった」というアイデアが表れている。また、リップグロスを指でほほに乗せ、その上からベビーパウダーをはたいて初雪が積もったように見せたユニークなチークや、キュートなモヒカンスタイルは大川雅之を中心としたTAYA CREATIVE TEAMによるもの。彼と一緒にショーを仕事をするのは、田代にとって長年の夢だったという。
ブラックを用いた前半のルックはミステリアスな魅力を秘めた「謎の森」を連想させ、輝く雪の結晶と合わせれば少しドラマチックな雰囲気に。このラメで輝く雪の結晶は沙真が描いた絵をテキスタイルへと落とし込んだもの。生地の色がブラックからグリーンに変わることで、雪の結晶はどこまでも瑞々しい水面の輝きへと変化を遂げ、シースルーグリーンが葉や風の心を映し出した湖の移ろぎを表現した。
トップスがコルセットのようなデザインのコケティッシュなワンピース、繊細なフリルやチュール、上品なパフスリーブやガーリーな襟元を演出するドレスは、ロマンチックでとびきりイノセント。スカートの丈も膝丈が多く、ストラップシューズを合わせてクラシカルに仕上げた。
ティアラを頭に乗せ、ローズのブーケを抱えたウエディングドレスのようなラストルックは思わず息を飲む存在感、それでいて微笑まずに入られない幸福感と透明感を残し、美しい物語の終わりを告げた。空気のような肌触りのオリジナルシルクを使用し、ふわりと浮くほどの軽さを実現した。
コサージュにも使われた白いガーベラの花言葉「新しい始まりに希望を」という言葉がぴったりの、着る人をおとぎの世界へといざなうような甘く純粋なコレクションだった。