2011年12月2日(金)、ESCADA(エスカーダ)がベルリンで発表した2012年春夏コレクションの中から、カジュアルラインであるESCADA SPORT(エスカーダ スポート)の30ルックとエスカーダの32ルックを選び、東京・六本木のグランドハイアット東京で披露した。
最初に登場したエスカーダ スポートの今季のテーマは、「The magic of the medina(メディナの魔法)」。メディナはアラブ諸国に存在する旧市街地を指し、中世時代の建造物やマーケットの喧騒といった生のモロッコの息づかいを感じる場所だ。"レッドシティー"と呼ばれる都市、モロッコ・マラケシュからインスピレーションを受けたこのコレクションでは、カラフルな幾何学模様やモザイク、鮮やかなプリント柄のシルク、そしてほのかにジュエルの煌めくアクセサリーが華やかに彩った。
蛍光ピンクのリラックスワンピースを纏ったモデルのケリーが、舞い上がるシャボン玉に包まれてショーがスタート。鮮やかなマゼンダやブルー、レッドといったカラーパレットが展開され、青い空にさんさんと輝く太陽やマーケットの賑わいを感じさせる。
中でも目を引いたのは、紫や黄色、ブラウンなどの水彩絵の具を垂らして描いたかようなプリント柄のワンピースとミディアム丈のトレンチコート。鼻をくすぐるモロッコの街中に漂う独特スパイスやハーブの香りや、未知の世界と出会う期待と不安に揺れる旅人の複雑な心が表れているかのように魅惑的。旅でリラックスする時間にも華やかさと美しいふるまいを忘れない、女性の美意識の高さがつまったコレクションだった。
エスカーダらしいスリムパンツの復活も見逃せない。風を受けて柔らかくなびくシルクブラウスや立体的なジャケットと合わせたコーディネートがエレガント。後半には深紅や、オレンジといった色とりどりの花が咲いたようなイヴニングドレスが華を添えた。巧みに施されたシャーリングやドレープ、スリットが、歩く度にドレスのかたちを変え、官能的な美しさに会場中が息を飲んだ。
金色の紙吹雪に包まれるなか、ショーのフィナーレを飾ったのは、胸元がセクシーに開いたロングドレスを着こなした上戸彩。チャコールグレーをベースに、くすみがかったピンクと鮮烈な赤の布地をアクセントに加えたカラーブロックドレスは、美しい色使いを得意とするエスカーダのエッセンスがつまった一着だ。
北アフリカの大地から吹き抜ける温かい風にのって、自然がもつ雄大さと全てを包み込む優しさをフェミニンかつ優美に表現したコレクションだった。