コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)の2018年春夏コレクションが、フランス・パリで2017年6月23日(金)に発表された。
コム デ ギャルソン・オム プリュスのショーは、始まる前になぜか妙な緊張感を感じられる。今回は、四方に観客を収容した四角いステージ。ここで何が起こるのか。川久保玲は、こうして期待しながら待ち続けた観客の心を、スタートと同時に攫って行った。
会場はダンスフロアさながら。モデルたちも音に合わせて自由に踊り出す。パリコレクションで連日見られるランウェイではなく、本当のエンターテインメントだ。
舞台上の彼らが着る洋服はすべて裏返し。ボタンだけがかろうじて通常通りに施されているが、ポケットは裏側で内ポケットのようになり、見返しや割った縫い代は表側の装飾として鑑賞できる。逆になっているのはジャケットだけでなくシャツもそうだ。シャツの場合は後ろと前が逆になっていて、ヨークを前にして、後ろにボタンを並べている。
裏向き……いや、今回に関してはこれが表向きなのだが、その上にはありとあらゆる装飾を施している。ダルメシアン柄のフェイクファー、花柄の刺繍、そしてレースアップなど。それらを細かく分割して配置し、裏側を派手に取り繕っている。
もちろんきちんと表向き、前向きなものもあるが、その場合は過剰なまでの装飾を配した。特に目立ったのが、まるでミラーボールのように輝くスパンコールのジャケットとパンツ。グリーンやピンクなど多彩なカラーで、舞台を服から盛り上げている。
実はこの裏と表の関係は、ショーで川久保玲が伝えたかったことに繋がる。今回、彼女は“ファッションは奥が深いものであり、服に潜む中身が大事だということ”を伝えようとした。だからこそ、今回は服の裏側、つまりはその奥深さを見せた。
裏を見せてもやはり飾ることは忘れず、むしろ裏を見せられるファッションだからこそ魅力的に映ったのだろうし、表をそのまま見せるときは行き過ぎた装飾をアウターに、繊細な素材をインナーにあわせているから、また異なる奥ゆかしさを感じられるのだろう。
きっと最後に登場した、おもちゃが飛び出したセットアップは、ファッションの奥にある“何か”が抑えきれず、外に出てしまった結果。こんなにもファッションにはたくさんのことが詰まっているんだぞ!ということを足や手、たくさんの顔が飛び出た奇妙な服が教えてくれている。
この楽し気なパーティーの中、服というものを哲学的に捉えた川久保玲の創作。誰しもが、このフィロソフィーとエンターテイメントが交錯する不思議な空間に酔いしれた夜だった。