mame(マメ)の2018年春夏コレクションは、デザイナーの黒河内が誕生日にもらったWilliam Egglestonの写真集をインスピレーションにした。1970年代、まだモノクロームフィルムが主軸であった写真の世界で、アメリカの新たな写真家たちがカラーフィルムを使用して撮った写真は「New Color」と呼ばれている。その写真家の一人であるWilliam Eggleston。彼の作品は、何気ない日常を切り取ったものばかりで、ページをめくるたび自分が見落としてしまいそうな“大切な何か”に気づかされるのである。
今シーズンのmameも彼の作品と一緒。ひとつのアイテムを手に取るたび、そして身に着けるたび“大切な何か”に気づかされる。なぜなら、今季のコレクションは、日常に溢れるものが、黒河内の脳内フィルターを経由して、洋服に形を変えたものばかりなのだから。
例えば、荒い編み目のニット部分。これは洗った野菜を吊るす網が着想源だ。野菜が落ちないように頑丈に編まれるはずのそれは、肌と重なり、女性らしさを引き出すものへと解釈された。同じく女性らしさを表す、ふわりと揺れる白いドレスは、光を通わせる間戸際のカーテンから。タクシーの中から見たあの青いビニールシートは、今季のキーカラーとなって、ニットワンピースやブラウスを鮮やかに彩る。
どこかで目にした看板のタイポグラフィーも、祖母の家の庭に咲いていた小さな花も、軒先で使われていた漁で使われたであろうガラス玉も……。本来は関係ないはずなのに、このコレクションの中では全てが繋がって、儚くも力強い女性像をしっかりと具現化してくれる。