ヒスイ(HISUI)の2012-13年秋冬コレクションが発表された。今季のテーマは 「ながいものにまかれるの?」。ことわざや昔話、言い伝えなど私たちの生活の中で影響力のある言葉として使われてきたが、たくさんの情報と価値観の多様化された現代社会には、誰もが信頼する"大きな物語"の説得力が弱まり、個人の中心にした"小さな物語"重要視されてきた。そして震災が起こり、たくさんの矛盾と変化が現れてきた今、個人の中にもその時代への変化を現実として実感することになってきたことを表現したコレクションだ。
ことわざの「ながいものにまかれろ」という背景には、中国の猟師と象の伝説があり、そこでは象は自分よりチカラのあるものとして表現されている。今季、"ゾウ"は、現実社会での権力や国の力の比喩として登場する。ゾウが細かくプリントされた赤のワンピースやタイツ、そしてゾウの足をイメージして作られたブーツカバーなどユニークでチャーミングなアイテムが印象的。ゾウからイメージした黒や赤、グレー、ダークグリーンといったカラーは、社会に対しての不安も表現している。モザイクのように編み込んだニットは、多くの個人の"小さな物語"の集合を表している。
コレクションは、アート作品と映像アニメーションによるインスタレーション形式発表された。アート作品「ゆれるゾウ」は、"おきあがりこぼし"の要領で玉に乗ったゾウのオブジェ。不安定な「ながいもの」にまかれることはできないまま、不安定 ながらも倒れることのないゾウは私たちはどう見つめるるか、問いかけている。映像アニメーションでは、不安や迷走の中選択できないジレンマや個人と社会との関係性を表現。パラパラマンガのようなこのアニメーションが刺繍になっているタイツには、葛藤や迷いというストーリーが見えてくる。
今シーズンより、リミテッドライン"hirokoito@HISUI"もスタート。グラフィカルなラインで女性の身体をより美しく見せるデザインのアイテムが揃う。