アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)の2019年春夏コレクションが、2018年6月22日(金)にフランス・パリで発表された。
インスピレーションソースは、20世紀後半の重要な人物画家のひとりであるイギリスの画家フランシス・ベーコン、彼の絵画制作に使われた写真を撮影したことで知られるジョン・ディーキン、そしてロンドン中心部にある歓楽街ソーホーだ。
大胆かつ生々しい表現で、雑然としたやや抽象的な人物が映し出される彼の絵画は、生涯にわたって称賛も批判も浴び続けたという。そんな彼が、中年期にはジョン・ディーキンとギャンブルを楽しんだ。その街が、ソーホーだったと言われる。
彼らが送った刺激的な日々の投影は、古典的なテーラードが主流となっている。角ばったショルダーにキュッと絞ったウエストのジャケットやコート。そして細身のパンツ。今季のパリファッションウィークでは、ストリートの流れに沿うブランドが多い中、潔く端正なトラッドを押し出してきた。これがアレキサンダー・マックイーンの強みだ。
そのクラシカルな装いには、彼の作品と同じくどこか異端的な表現があって、例えばトレンチコートはウエストの高さで、素材が分かれていて、ウールとレザー、ベージュとブラックの色違いなどが登場している。さらには上はジャケット、下はトレンチのような組み合わせもあった。同じくハイブリッドな手法は、コートのバックスタイルにも用いられ、ウールジャケットは、後ろ中心部に光沢を放つシルクが贅沢にも配されている。
破壊的なディテールも多用されていて、それは色を重ねて激情的に作品を完成させる彼の作風と通ずるものを感じる。ジャケットはレイヤードしたようなフロントのディテールを採用。トレンチコートは、袖が裂けたようなデザインで、腕が肘あたりから解放されている。さらに、極端に短い丈も特徴で、テーラードもトレンチコートもともにかろうじて胸が隠れる程度のレングスで提案している。
クラシックな色はもとより、絵画を彩る鮮やかなカラーパレットが目を惹いた。ダブルのライダースとタイトなレザースキニーは最初こそオールブラックだったが、後には全身にペンキを無造作に手塗りで仕上げた大胆なデザインで登場。まるで朽ち果て糸が垂れ下がったようなオーバーサイズのニットは、ペンキの色が染みわたったよう。また、ピンクやブルーの鮮烈なカラーを全身で表現するだけでなく、時には、トラックススーツのサイドライン、ジャケットの裏地、サイドゴアブーツのゴア部分やスクエアトゥのレザーブーツの踵部分に色の破片を当てはめている。