カルバン・クライン 205W39NYC(CALVIN KLEIN 205W39NYC)の2019年春メンズコレクションが、アメリカ・ニューヨークで発表された。
まず本コレクションについて、ある2つの映画作品がコンセプトの大きな礎となっている。『ジョーズ』と『卒業』だ。チーフ・クリエイティブ・オフィサーであるラフ・シモンズは、このアメリカを象徴する2作品が与える、陸地と海、若さと成熟、男性と女性、といった対照的な世界の狭間で生まれる"緊張感"を一つの美学としてランウェイで表現した。
本コレクションでは、どのルックも対照的なアイテムを用いて物語を生み出す。ダイビングスーツのような質感のオールインワンに真っ赤なニット帽。全く異なる世界観を持ったアイテムを合わせることで、"調和"ではなく"せめぎ合う"ような一種の緊張感や違和感を与える。これこそが、ラフ・シモンズのイメージする映画『ジョーズ』を体現する感覚なのかもしれない。
ダイビングスーツを上半身まで脱いだかのような出で立ちすら、スタイリングになり得ることを証明した。ダイビングスーツ風オールインワンの裏地にはレオパード柄、上半身には染め布のような模様のトップスを配し、個性的だが華やかな印象に。上半身と下半身で『ジョーズ』のテーマの一つである"陸地と海"を表現したかのような組み合わせとなっている。
卒業式で着用するガウンと帽子、ツイードのジャケット、さらにはダイビングスーツ風のボトムスなど、一目で複合的なルックであることがわかる。ガウンや帽子といったアカデミックドレスやツイードジャケットは、1950~60年代の上流社会をイメージし、実際に当時の布地から再現されたパターンで構成された。
1967年公開の『卒業』では、"親と子"の異なる世代間で生じる"衝突"や"愛"を描いているが、これもまた本コレクションのコンセプトであり、多面的なコンセプトを大胆に表現したスタイリングとなっている。
まるで海から上がってきた直後のような濡れた質感のトップスに、1950~60年代のタキシードジャケットを合わせ、2作品を1つのルックに落とし込んだ。マリンスポーツテイストなインナーに対し、鮮やかなマリンブルーの文化的ユニフォームを合わせた点は、異なる世界観にわずかながら統一感を与えた。
最後に、今までとは少し異なるルックが登場。アメリカの芸術家 アンディ・ウォーホルがアメリカ人ファッションデザイナー ステファン・スプラウスに対して抱いていた"心的イメージ"を引き裂き、フリンジ状のネックレスに。目を引くイエローのレオパード柄パンツとレッドブーツは、"ポップアートの巨匠"アンディ・ウォーホルをイメージしたかのような組み合わせだ。
アメリカが生み出した世界的アーティストの描く"心象風景"や、映画作品で描かれる"アメリカの風景"など、ラフ・シモンズにとって「アメリカ」という国が大きなインスピレーション源であるという事を、ランウェイのルックを通して感じられるコレクションであった。