JW アンダーソン(JW Anderson)の2019年春夏コレクションは、アーティストデュオ・ギルバート&ジョージ(Gilbert & George)のコラボレーションによるユニセックスのカプセルコレクションを含む、男性的な一面をのぞかせながらも、ジェンダーレスなコレクションだ。
ギルバート&ジョージは、イギリスを代表する反体制のアーティストデュオ。奇抜で、時に挑発的な彼らの作品は、物議をかもすことも多々あるが、その悪戯なアートは日常へと通じており、アートは日常生活と表裏一体の関係性をもつということを示唆している。
日常とアートが表裏一体だというその概念は、伝統工芸を現代、そして未来につなぎたいという想いから、アートに精通するジョナサンの感性をくすぐった。ギルバート&ジョージの作品は、ストリートの若者達や不良少年をモチーフとすることが多い。今回のコレクションではその作品群がそのまま投影されている。
そして、そのベースとなったワードローブもまた、ギルバート&ジョージからインスパイアされたものだ。彼らが50年以上住むイーストロンドンにあると考えたアンダーソンは、1980年代当時のイーストロンドンの空気感を取り入れた。ブリティッシュなムードがある一方で、退廃的なアンダーグラウンドの世界も混在する。パンキッシュなレザーのジャケットやボトムスがその象徴的アイテムだ。
シルエットは、メンズには珍しいミニ丈かつタイトなシルエットのトップスと、極端にオーバーサイズのシャツやコートを提案。サイズ感は両極だが、どちらもジェンダーレスであることに、おそらく変わりはない。性差を感じさせないワードローブの構築は、JW アンダーソンが得意とすることだ。
テキスタイルの遊びもまた例年通り。まるでワーカーウェアをそのまま現代に持ち込んだかのようなデニムやカーキのワイドボトムス、柔らかな落ち感のあるウールのコート、マルチな編み方で構成するニットなど、優しさと刺激に溢れたコレクションはとても楽しい。今季は、ギルバート&ジョージの作品が加わったことでよりユーモアにあふれると同時に、服にメッセージ性が込められた。