アミ アレクサンドル マテュッシ(ami alexandre mattiussi) 2020年春夏メンズコレクションが、2019年6月18日(火)に、フランス・パリのグラン・パレで発表された。
ショーの始まりは、“黒”から始まった。広大なグラン・パレの会場に作られたランウェイに次々と現れるモデルたちは、こぞって全身を漆黒でかためたワードローブで登場。その“黒の行列”には目立った装飾こそないものの、同一の単色で固めることで、素材やディテールの役割、そして美しいシルエットに観客の目が向けられる。
タンクトップをタックインしたレザーパンツには、テーラリングのロングベストを組み合わせ。本来異なるムードを持つアイテムだが、全体のラインをストレートで整えることで、どちらかの要素が強まることもない絶妙な均衡感を保っている。けれどモデルが動きだすと、雰囲気は一変。ベストのサイドにあしらわれた深いスリットは、空気を纏うたびに、ひらりと舞う躍動感あふれるシルエットを描いていく。
シルエットの面白さはウィメンズも同様。エレガントなブラックドレスは、片側の裾の分量を多くとったアシンメトリーなデザインに仕上げた。また裾にギャザーを思い切りよせたマーメイドドレスのようなスカートも存在する。
散見されたレザーが、本来のハードなイメージとは異なる印象をもたらしていることにも注目したい。レザーで仕立てたロングコートは、重厚感を感じさせないガウンのようなリラクシングなフォルムが魅力。またロングコートの下に差し込まれた薄手のレザーシャツは、着心地の良さそうな柔らかな風合いに仕上がっている。
やがてショーの中盤に差し掛かると、ベージュやグレーなど、黒以外の世界がランウェイに広がっていく。さらにその先に待ち構えていたのは、エネルギッシュなレッドやビビッドピンクといった鮮やかな世界。おそらくは最初に登場した“黒”のワードローブのデザインとそこまで大差はないと思うのだが、黒の中に“カラー”を投じるだけで、より一層鮮烈な色彩を放ち、コレクションにリズムを生み出していく。
その後、黒との色の組み合わせは、白との実験へと移る。格子柄、ボーダー柄、黒と白のパッチワークのような柄…。全くの両極端な色だからこそ浮き上がるコントラストはやはり美しく、黒をベースにしたからこそ成し得る技であることも気付かされる。
ランウェイに流れるミュージックのリズムをとるように、モデル達がこぞって身に着けていたのが“鈴”。ネックレスやリングといったアクセサリーから、シューズ、そしてワードローブに至るまで積極的に取り入れられ、ショーのラストには鈴を全面にあしらったパンツが優しい音色と共に去っていった。