ウィーウィル(WEWILL)の2020年春夏コレクションが、2019年8月27日(火)に東京・原宿にて発表された。
「スポーツをテーマにしたかった」と語るデザイナーの福薗英貴は、今季「シーソーゲーム」をテーマとし、野球のインスピレーションを膨らませていった。その中でアイコンとして捉えたのが、ジャッキー・ロビンソン。彼は人種を越え、黒人メジャーリーガーの歴史を変えた選手だった。
まず、コレクションを俯瞰して、分かりやすく目立ったのが野球のユニフォームになぞらえたワードローブ群だ。ブラックvsベージュという対立構造の中、今季はほどんとのルックは、ユニフォームさながらセットアップで提案している。リネンのジャケットにはリネンのクロップドパンツ、カーキのオーバーサイズコーチジャケットには共布のテーパードパンツをあわせた。
シルエットはアクティブなシーンでも窮屈にならない緩やかなものばかりで、ジャケットはクロップドのショルダーにアームホールの広いオーバーサイズを採用。素材もそれに見合うような快適性を求めたラインナップを揃え、リネン、コットン、シルエットなどリラクシングなエッセンスを注入している。
スポーツ、そして野球をテーマに掲げながらも、すべてがフォーマルシーンを想起させるような組み合わせなのも今季の特徴。それは、ジャッキー・ロビンソンが活躍した当時流行した極めて男性的な男性のワードローブを、ボックス型のジャケットやスラックスで表現しているためでもある。ベースボールシャツを想わせるノーカラーのトップスを合わせたスリーピースのセットアップは、シワ加工のリネン素材も相まってクラシカルな男性像を具現化している。
野球に欠かせないディテールとして、ステッチの使い方も注目しておきたいポイントだ。スーツには、ベースボールシャツさながらの、太めのステッチを走らせた。小物にもひとひねり加え、架空のチーム「ウィーウィルギンザ(WEWILL ginza)」のロゴ「Wg」の文字を配したニューエラ(NEW ERA)のキャップを被って、いざ試合へ……。
試合へ向かう彼らのルックに、デザイナーの福薗が暗に秘めた“ダイバーシティ”という意図が見え隠れする。フォーマルとスポーツの垣根を超え、融合したこと。黒とベージュのそれぞれ異なるニュアンスの良さが垣間見れること。
両極にあるものにお互いいい部分があること、そしてお互いを認め合うこと。その本意を導くため、ジャッキー・ロビンソンの存在は大きかったようだ。今季のコレクションは、互いに認め合うことへの優しい賞賛が聞こえた“ひと試合”だった。