エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)の2020年春夏コレクションが、プレゼンテーション形式にて2019年9月18日(水)に発表された。
今季の着想は、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが起こした平和のための活動「ベッドイン」。この活動は、1969年に結婚した2人が、ベトナム戦争で世界が混乱する中、マスコミに大々的に取り上げられる自分たちのハネムーンを平和のコマーシャルにしようと行ったものだ。
会場を縦横無尽に歩き回るモデル達は、手にスピーカーを持っており、そこからジョン・レノンの「イマジン」、車のクラクション、街の人々の話し声、教会の鐘、ロックミュージック……と、各自様々な音を流している。通り過ぎる際に生まれる調和と不協和音が、平和を忘れかけた混沌とした世界を再現するかのようにも思える。
これらの演出もそうだが今季のワードローブには、「時に交わり、時にぶつかる複数のアイデンティティが共存すれば進化の可能性が見える」というエムエム6 メゾン マルジェラの考えがある。だからこそコレクションには、ジャケット、トラックスーツ、ドレスルック、ブラックレザー、デニムパンツなどあらゆるものが混在している。アクセサリーは“アクセサリーらしさ”のあるものだけでなく、大きなハウスキーやコルク栓、安全ピンなどをモチーフに再考された。“何がこうあるべき”だという線引きは皆無だ。
そんな中、そもそもジョン・レノンとオノ・ヨーコのウエディングに際した「ベッドイン」が着想なことから、ウェディングを連想させるルックが多数登場する。揺れ動くチュールに不釣り合いなカットソーのドッキングや、白いベールに包まれたシャツブラウスなどがその好例。
ウィメンズでは、ヌードボディスーツを巧みに使用して、ドレスルックさながらのベアトップを装いつつも、ボトムスには男性的なワイドスラックスやデニムパンツをセットした。一方、メンズのタキシードジャケットは、解体されたシルエットで、既成イメージを取り払っている。
今季の疑問への答えを導くため、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの生まれ故郷である英国と日本の伝統も、同じく寄せ集めたようだ。特に顕著に表れたのがジャケットスタイル。紳士的なジャケットは、まるで着物のような前合わせのスタイルで提案している。素材はジャケットだからと言ってフォーマルに限らず、ホワイトサテンや濃淡のあるデニムを使用しているのも面白い。
そして象徴的に用いられた花束は、「ベッドイン」の際に発表した、花に囲まれ、白いシーツと布団に覆われたベッドの中で微笑む2人の写真が伝えた、柔和な空気と同じ“愛”の温かさを感じさせる。混沌とした世界に平和をもたらすメッセージとした「ベッドイン」が伝えた“愛”の表現は、多様性のある世界が乱雑にならず進化への一途をたどる、その源となっているようだ。