バルムング(BALMUNG)は、Rakuten Fashion Week TOKYO 2020 S/S2日目となる2019年10月15日(火)に2020年春夏コレクションを発表した。
壊れたテレビ、障子のないふすま、コードの外れたライト。会場の中央に無機質に置かれたのは”不完全な”日用品だ。デザイナーHACHIが今シーズン作った舞台は、人が消え忘れ去られた街のように、温度のない世界だった。
この”温度のない感覚”はコレクションピースにも連動している。ウェアのほとんどは、白やグレーなどの無彩色で彩られ、温かみを感じられない。時折飛び出す、街の一角を切り取ったようなフォトプリントや、スポーティなロゴ、洋服をモチーフにしたようなマークが、何かメッセージを隠した暗号のようにもみえる。
色彩を制限された中、洋服の個性を生むのはシルエットだ。スリムなパンツは無理やり引きちぎられたかのように裾がカッティングされ、ビックサイズのワンピースは羽のように袖が広がっている。
身体のラインを露骨に出すレギンスやインナートップス、モデルの体型を無視したようにオーバーサイズのアウターやトップス。個性をぶつけ合うように、フィット&フレアのフォルムを組み合わせることで、遊び心溢れるスタイルを作り出している。
洋服そのものは、まるで絵やアート作品を作るように創作的に仕上げられている。極短のパンツ、スリット入りのワンピースなどには、シースルー素材ややや厚みのあるリブニットなど、異素材がランダムにパッチワークされている。
本来内側にあるはずのポケットは外に飛び出し、立体的な凹凸に。そのポケットを強調させるようにステッチが施され、繰り返される装飾によって洋服そのものが複雑に見えてくる。
バルムングらしい近未来なエッセンスは、今季も継続。オーロラのように輝くシースルー素材とシルバーのキルティング地で、洋服や小物を作った。特に印象的なのは、大きなグローブ。このビッググローブは“異質”で、どこか異世界へトリップしたような不思議な気分にさせてくれる。合わせた透明素材のシューズもまた、近未来の要素に満ちている。