リミ フゥ(LIMI feu)は、2020年春夏コレクションを発表した。
スタイルより“アチチュード”=態度に重きを置いた今季。セックス・ピストルズや、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)が築き上げたパンクカルチャーに着想を得た、ストレートな表現が散見された。ハーネスのようにベルトを多用したトップスや、「DO WHAT YOU BELIEVE」のメッセージを配したチェックのパッチワークガウン、ボンデージパンツといったウェアからは、“強さ”に後押しされた自由な思想が見て取れる。
象徴的なのは、偉人の肖像画の断片をモンタージュして作られたアートワーク。セックス・ピストルズの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン(God Save the Queen)」のCDジャケットを彷彿させるグラフィックは、ごちゃ混ぜ感があり、尖っていながらもどこかファニーな仕上がりとなっている。まるで、図像から浮かび上がる、何者でもない“空虚”な存在を笑い飛ばしているかのようだ。
大胆なアートワークを背中に配したレザーのライダースジャケットは、ショルダーにスタッズをびっしりと配したり、襟の折り返し部分を粗野に白く塗ったりと、UKパンクを思わせるアナーキーさが随所に表れている。裾にはダイナミックにハサミを入れて空間を開け、だらりと垂れ下がるような形に仕立てた。
パンクのアヴァンギャルドさは、既成概念の破壊や“崩しの美学”に表れる。切れ込みや穴、複雑な切り替えによってフォルムに唐突な変容をもたらした、ジャケットやパンツ、カットソーからは、迷いの無さがうかがえる。
通常であれば一様に折り重なるはずのプリーツは、ボートネックのジャケットに用いられることでひだを崩し、あえて歪んだ表情に。切り替えで布地の流れを変えたロングスカートと合わせ、動きのある着こなしに仕上げている。
服の中心となる合わせを敢えて斜めに仕立てたストライプのシャツには、袖口にヴィヴィッドなピンクのペイントがあしらわれている。一度白く塗った上に色を重ねたことで、ぱきっとした鮮やかな発色に。また、毒っぽいネオンカラーのレースアップブーツや、ネオングリーンのオーガンザで仕立てたプリーツスカートなど、要所要所に刺激的な色彩を差し込むことで、アグレッシブさをより一層際立たせている。