パリファッションウィークで発表されたリック オウエンス(Rick Owens)の2013年春夏コレクション。6月に発表されたメンズコレクションと同じ、「ISLAND(島)」がテーマ。"すべての男性は自身の規律、学問そして信念をもつ島である"と位置づけた男性へのメッセージとは異なり、今回は女性という存在こそが、平穏な心を保つことができる特別な場所=島なのだという想いが感じられる。
メインカラーは、サンドやアイボリー、シルバーなど、優しげな印象だ。差し色にブラックが使われ、どこか寂しげな影を落としている。素材は、夜明けの光に照らされた海を薄く削り取ったようなナイロン素材やラムレザー、光沢のあるパイソンなどが用いられた。
象徴的なシルエットは2種類。前半では、コクーンチュニックや、シャーリングで描いたAラインのドレスなど、身体を覆い尽くすシルエットが登場した。後半では、マキシ丈のタイトドレスがシャープなショルダーラインのトップスと組み合わせて提案された。
マントのフロント部分の留め具に用いられた金属のモチーフが、柔らかな色彩や素材とコントラストを成していたのも印象的だ。その残響はサンダルにもみられ、ゴールドの円盤が膝下を覆っている。
キーアイテムであるバブルドレスと共鳴するかのように、真っ白な泡が壁からぽとりぽとりと落ちる演出も。最後には雲のように塊を成して、まるで天国を思わせるかのような神聖な雰囲気で会場を包み込んでいた。「泡」をイメージしたボリューム感と、海の水平線のような静けさを彷彿とさせる直線的なラインを多用することで、平穏な心のうちが見事に表現されていたコレクションとなった。