ザ ヴィリディアン(The Viridi-anne)の2020年秋冬コレクションは、前シーズンから引き続き、「インサイレンス(INSILENCE)」をテーマに掲げた。静寂を醸す服は、ブランドのキーカラーである黒が基盤。無駄を削ぎ落とした中に、シルエット、素材、機能性といったあらゆる側面から磨きをかけ、静寂の中の美しさを見出す。
まず特筆すべきはアウター群。ダウンジャケットは、圧倒的ミニマルを追求した1着。縦にも横にも伸びる2wayストレッチ素材を用いているため、ダウン特有の着膨れ感のないシルエットながら快適な着心地を叶える。止水ジッパーやハイネックから繋がる立体的なフードなどのディテールが、“洗練されたスタイルを紡ぐカケラ”となり、モードな演出に拍車をかけている。
そして、毎シーズン人気のレザーアウターも今季はより機能性に長けたデザインだ。撥水加工を施した柔らかいラムレザーで、中綿を入れることで斬新なシルエットを築いた。ライナーにストライプのキュプラを差し込み、リバーシブルのアイテムとして提案している。
レイヤードやコンビネーションのディテールも冴え渡り、ローゲージのニットをナイロンブルゾンに組み合わせた1枚は、取り外して各単体で着こなせる仕様。ナイロンブルゾンの襟元にはフードも隠されている。
トップスは、まるで静寂を破るかのようなクレイジーパターンやドッキングが目立つ。その中で、ダニエル アンドレッセン(DANIEL ANDERESEN)のコラボレーションが、穏やかな風を吹き込んだ。重量感のあるローゲージニットは、タフさの中にデリケートさも垣間見せる1着。クルーネックニットだけでなく、ガウンニットも展開している。
ボトムスも同じくリラクシングなエッセンスを強めに注入。パターンの切り替えやストレッチ性の高い素材をあてはめて、ルームウェアのようなラフさを出しつつ、ザ ヴィリディアンならではの上品さを兼ね備えた。
小物類ももちろん黒が基盤の色。特に今季のバックパックは、通常を逸脱する変則的なシステムだ。装着された5つのポーチはそれ単体で使用することもでき、ボディバッグとしての機能性もある。黒が築く静寂の世界に深みを加えるひとつの要素となった。