ハトラ(HATRA)は、2020-21年秋冬コレクションを発表した。
テーマの“STUDY SKINS”は、英語で“仮剥製”を意味する語。観賞用に生き生きとした姿で作られる「本剥製」とは異なり、主に学術研究の目的で用いられる“仮剥製”はこじんまりとした眠っている時のようなフォルムで作られる。デザイナーの長見佳祐は、“仮剥製”が並ぶ鳥類標本から着想を得て、今季のクリエーションに臨んだ。
象徴的なのは、AIの機械学習によって膨大な量の画像を取り込み、“架空の鳥”を生成したジャカードニットだ。フクロウやトキ、もしくはペンギン…といった具体的な鳥の形とはまた異なる、抽象的なモチーフになった“架空の鳥”の羽毛は鮮やかなグラデーションを描き、アーティスティックな仕上がりに。
2020年1月にスイス・バーゼルで発表された、生地の廃棄ロスを削減するためのパターンメイキングシステムを擁するシンフラックス(Synflux)との共同プロジェクト「オービック(AUBIK)」に続く形で、AIによる機械学習をデザインに取り入れた。
杢調の色味を織り成すベージュやグレーのツイードジャケットや、荒めの粒子をあえて残したプリントを配したカットソー、ファーを配したケープなどをはじめ、生き物の肌理(きめ)や羽毛を思わせるデザインも散見された。
左右で異なるパーツを配したジャケットや、羽を彷彿させる立体的な袖を配した、コットンのような手触りのシェルジャケット、様々な方向にボーダーを切り替えたカットソーなどもまた、アシンメトリーな生物の身体構造を連想させる。ハトラのコレクションに継続的に登場している象徴的な“目”のモチーフもまた、完結しない形でファーのベストにあしらわれている。
また、有機的な配列を思わせる、穴を並べたレース素材のロングワンピースも目を引く。2020年春夏コレクションにも登場した“漁業網”のようなメッシュレースを作った工場と同じ工場が手がけた、しなやかできめ細やかな質感が印象的だ。
襟付きシャツにこのレースで仕立てたワンピースを重ねたルックでは、羽毛モチーフのネックレスや、防護服に用いられる不織布素材「タイベック(Tyvek)」とフリースをボンディングしたバッグを組み合わせることで、フューチャリスティックな要素とプリミティブな“生”の感覚を共存させた。