ハトラ(HATRA)の2025-26年秋冬コレクションが、2025年3月20日(木・祝)、東京・TODA ホール&カンファレンスにて発表された。テーマは「WALKER」。
ここ数年、生成AIや衣服の3Dシミュレーションといったデジタルクラフトツールを駆使し、人間とは違う視点をクリエイションに取り入れているハトラ。デザイナーの長見佳祐は、これを宇宙人の意見だと思っているそう。「WALKER」と題し、初のランウェイショーを実施した今季は、衣服が物理的に、または意味的に揺れることに着目し、“揺らぎ”を表現した。
分かりやすく“揺らぎ”を表したのが、ほぼすべてのパンツに取り入れたプリーツ。柔らかに揺れ広がるフレアなシルエットは、着用者の動きによっても絶え間なく変化する。これらの立体的なプリーツパンツの型紙造形は、3Dシミュレーションソフトウェア「CLO」を活用しモデリングした。
プリントにもまた、目に見えて“揺らぎ”が落とし込まれている。まるでシャボン玉にうつる光の揺れや、光の波動を感じられるようなプリントを、シルクスクリーンの技法でシアーなドレスやトップス、パンツにあしらった。柔らかな生地の動きと共に、揺らめくプリントを見ることができる。
題材にした“揺れ”は、様々なイメージが生まれては消え去っていく、非連続的な変化として“瞬き”とも呼んでいる。“瞬き”は、長い旅の一瞬一瞬をカメラで写し取る際に生じるような、眩い輝きともいえる。本来そこにあるはずのパーツを別の場所に移したルックが登場するが、これは眩さゆえに目が眩み、服の印象が曖昧になるという事象を表したものだ。メッシュカーディガンの袖には、シャツの襟を配置し、見る者を困惑させ、服の印象をぼかした。
一瞬一瞬が絶え間なく流れていく時、目の端に映るのは遠ざかりゆく長い影。こういった遠近を衣服を通して表現したいと考えた長見は、伸び縮みしているかのようなダイヤのドレスを提案。上部と下部で大きさの異なるダイヤを繋ぎ合わせ、伸び縮みを表現した。
ランウェイには、長見の趣味でもある“水晶収集”にちなみ、水晶を手に持つモデルも。地球のかけらともいえる水晶を通して、 今いる地球と、手の中にあるミクロな地球によって、見るものの遠近感を狂わせるという手法がここにも存在している。