タン(TAN) 2020-21年秋冬コレクションが発表された。
今シーズンは、遠く離れた異国の地・ドイツへ一人旅をした思い出に着想を得た。その土地で見た風景や、心に残る思い出。そんな記憶の“糸”を一本一本繋ぎ合わせるかのように、今季もタンらしいニットの可能性を最大限に活かしたワードローブが展開される。
毎シーズン、カラフルな色彩が多くみられるタンのニットウェアだが、今季はどこか“くすんだ”パレットで溢れているのが印象的。
落ち着いたムードのダークブラウンやグレー、ベージュ、アイボリーといったベーシックカラーに交わるのは、淡くダーキッシュなラベンダーやブルー。同系色で統一したスタイリングが今季の主流だが、異なるカラー同士を組み合わせても、おぼろげな様子で溶け合う、ヴィンテージライクな表情に仕上げている。
タンが毎シーズン提案しているレイヤードスタイルは、色味を抑えたことで、服と服の“境界線”の曖昧性が増し、より複雑な表情に。首元や胸元などに、ベルトやテープを施したお馴染みのディテールは、洋服の間を自由に駆け巡り、モダンな遊び心をプラス。前身頃をまるっと繰り抜いた定番のボレロは、秋冬らしいタートルネックとなると同時に、ニットスカートとのセットアップで提案されている。
レイヤードのないスタイリングでも、今シーズンはシンプルなパレットによって、ニットウェアそのもののシルエットやパターンが自然と引き立てられていることにも気付かされる。まるで空気を含んだかのように立体的に膨らんだワンピースや、卓越した技術が伺えるキルティング加工のジャケットやラップスカート。またその中に時折交わる織物のようなパターンが、エレガンスなムードを助長しているのだった。