マルニ(MARNI) 2021年春夏ウィメンズコレクションが発表された。デジタルショーでの実施となった今シーズンは、ミラノ、ロサンゼルス、ニューヨーク、ダカール、上海、ロンドン、パリ、ロンドン…など世界各地を舞台にした、40以上の物語で構成。新コレクションを纏うモデルたちのルックは、そんな彼らが住まう地域のストリートで撮影されたものだ。
コレクションに溢れるのは、まるで路地裏で見つけたストリートアートのような、力強いアートワーク。大胆に文字を走らせた真っ赤なロングコートに、真っ白な壁にピンクのペンキを浴びせたかのようなシャツ×パンツ、「MARNI LOVER」の文字と共に、ポップなオレンジでメッセージを綴った黒のレザーコートといったアイテムによって、ストリート感溢れるエネルギッシュなムードに満ち溢れている。
街中で頻繁に見かけるストライプ柄は、まるで残ったペンキで“適当”に描いたような荒々しい仕上がりで、そこには本来もつカジュアルなムードは感じられない。中でも目を惹いたのは、イエロー×ブラックのストライプを組み合わせた2ピースのルック。トップスは、まるで手で切り裂いてしまったかのような“傷跡”をあえて残すことで、ハードなイメージをよりプラス。またトップスとボトムスの裾にはいずれも、傷んだ生地がほつれてしまったのようなディテールが加えられている。
一方でクチュール×ストリートを組み合わせた、フェミニンライクなルックも印象的だった。ポップな花模様に、チュールをたっぷりとあしらったドレッシーなピースは、わざとドレスの中心を破いてしまったかのように、トップスの裾が乱雑にカットされているのがユニーク。またドレスに似つかわしくない“超ロング丈”の袖、下駄のような角ばったソールを持つスニーカーを合わせることで、ブランド独自のストリートスタイルを確立している。
デニム×レザーを繋げたロングボトムスのパンツ、左右で生地を切り替えたテーラリングジャケットなど、マルニらしい遊び心溢れるハイブリッドなピースも目立つ。貼り付けたり、破ったり、ペイントを重ねたり…。本来ある完全な姿からあえて形を崩した“豪快”な姿でありながら、絶妙な均衡をもたらしているのは、職人たちによる丁寧な手作業が存在するから。そのアイロニックな構造が、纏う者だけでなく、見る者にもファッションの楽しさを教えてくれるのだろう。