アンダーカバー(UNDERCOVER) 2021年春夏コレクションが発表された。2019年春夏コレクションに続き、複数のセクションで構成した、ユニークなアプローチのもと制作しているのが特徴だ。
6つの異なるコンセプトに基づいて構成された今シーズン。それぞれ完全に独立したチャプターは、異世界を跨ぐかのように全く異なるテイストを提案していて、それらは私たちに様々な物語を語りかけているかのようだ。
ある時はおとぎ話の世界、そしてある時は少し遠い先の未来。思わずニヤリとしてしまう、ブランドらしいシュールな世界観を閉じ込めながら、今季もファッションの楽しさを改めて思い出させてくれるコレクションが幕を開ける。テーマは“ザ シックスセンス”。
6つのセクションの中で最も注目したいのは、時のアーティスト パブロ・ピカソの青春期に当たる“青の時代”に着想した「Pablo」。ロングシャツやジャケット、スウェットといったアイテムには、デザイナーの高橋盾による抽象画が、そのまま転写されているのが特徴だ。
陰鬱な作風でも知られる“青の時代”を意識したからなのか、高橋が描く抽象画のパレットは、本来明るい印象をもたらすカラーを、退廃的かつ煤けた表情に導いているのが印象的。また各スタイリングは、ブルー、レッド、レモンといったテーマカラーを設定するかのように、単色を主役に構成しているのが基本だ。
「The Royal Family of the basement」で描いたのは、“地下に暮らす”王室の王女たちだ。光の当たらないベースメントに住まう彼女たちの洋服は、“ニセモノ”のジュエリーを首元にたっぷりと飾ったストリートスタイルで提案。一見フォーマルに見えるツイードジャケットのようなアウターも、実はもこもこのパイル素材…といった具合に、ちぐはぐな要素が楽し気に交わっている。ボトムスはゆったりとしたイージーパンツ、足元はスニーカーを合わせるのが、この世界の掟のようだ。
他のセクションと比べると、“スタンダード”に見えてしまうのが「coexistence」。イメージソースとなったのは、高橋が創作したクリーチャー“GRACE”と共に暮らす未来の部族たちである。過去のワークウェアを再構築したというボトムスは、丸み帯びたフォルムと、くしゃっとした素材を組み合わせた温かみのあるデザイン。トップスにはショート丈のジャケットやニットウェア、首元には決まってスカーフをちょこんと飾りながら、自由でのびのびとしたカラフルな色彩で彩られている。
サンリオのキャラクター柄のルームウェアを展開する「CUTE & MADNESS」も、今季注目すべきチャプターだろう。真っ赤なリボンで顔を覆うハローキティ、顔を覆ってうつむくマイメロディなど、普段見慣れたキュートなキャラクターたちに、どこか“狂気”を同居させたブランドらしい世界観へと引き寄せている。ラインナップは、ロング丈のパジャマや、ワンピース、スウェットなど。これらのアイテムを纏うモデル達は、実際にサンリオピューロランドで撮影されたという。