アンダーカバー(UNDERCOVER)の2025-26年秋冬コレクションが、フランス・パリにて発表された。
アンダーカバーの35周年を記念するコレクションとなった2025-26年秋冬コレクション。ショー開催にあたり、デザイナーの高橋盾は2004-05年秋冬コレクションに立ち返った。フランスのぬいぐるみ作家アン・ヴァレリー・デュポンが作るぬいぐるみと、アメリカのシンガーソングライター、パティ・スミスのスタイルに着想を得て、パティ・スミスがぬいぐるみのような手作り感満載の服を着ていたら…という発想のもと作り上げたシーズンだった。
高橋にとって“私的ベスト”だというそのコレクションを、今季は現代の大人カジュアルスタイルを中心に生まれ変わらせようというのがテーマ。コレクションでは、パティ・スミスのメンズライクなロックファッションにインスパイアされた、シックでハンサムなルックをベースに、どこかファンタジックな世界観を組み入れた。
モデルたちがまとうウェアは、いずれもぬいぐるみを思わせる温かみのある素材を採用しているのが特徴的。ふっくらと厚みのあるニットガウンや、シャギーなテーラードなどを、パティ・スミスらしく無造作に羽織っている。
過去のコレクションを“リメイク”したともいえる今季。たとえば、柄や素材が異なる複数の布を縫い合わせ、リメイク風に仕上げた袖の長いジャケット。いずれも異なる生地を合わせているため、どこか不均一だ。
コレクション全体に共通した、複雑なパターンメイキングも特徴的。上述したジャケットに限らず、通常ではありえない箇所に入れたダーツ、テーラードに採用したアンバランスなベントなど、手作業による不完全さが表現されている。また、不揃いなボタンやブローチなども仕立て直した名残を思わせる。
チャンピオン(Champion)とのコラボレーションによるスウェットパーカーやパンツも登場。本来裏地に縫い付けてあるはずのタグが、表に飛び出たデザインとなっている。買ったばかりの真新しさも思わせるディテールは、本コレクションがただのリメイクではないのだということを示唆しているよう。
インスピレーション源のひとつ、ぬいぐるみを直接的に表現したのが、アニマルモチーフのパファードレス。ふっくらとボリューミーな“ぬいぐるみ”がドレスの裾として成り立っており、その様はどこか現実性に乏しい。パファージャケットも、肩から動物の耳が生えたような独創的なシルエットに仕上げている。