ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)は、2025-26年秋冬ウィメンズコレクションを2025年3月20日(木・祝)に池袋のロサ会館にて発表した。
小学生の頃から池袋に通学していたというデザイナーの吉田圭佑にとって、ロサ会館は特別な場所であったという。ゲームセンターがあり、映画館シネマロサがあり、TSUTAYAもあるロサ会館は、1人の孤独な時間を埋めてくれる空間。ネガティブにとらえられがちな“孤独”だが、実は自分はその孤独に救われてきた部分があったのではないか、と振り返る。今季は、そんな孤独感を俯瞰して見つめ、自身の美意識の中に取り込んでいくような試みが行われている。
賑やかなゲームセンターの喧騒の中でひっそりと歩を進めるモデルたちは、個人的な自由を楽しむ時のように、装いによって静かに個性を主張する。スリップドレスにパフィージャケットを羽織り、デイパックをひっかけたルックや、柔らかなピンクのロングフーディーは、孤独さを埋めるために娯楽を求めて家の中から出てきたような雰囲気をまとっている。ベッドマットの柄から着想を得たキルティングジャケットは身体をすっぽりと覆い、温かみのある佇まいを描き出す。
レーシングゲームを思わせるガウンをロングドレスに重ねたり、ジーンズにチェックシャツ、ツヤツヤとしたヴィヴィッドなグリーンのブルゾンを合わせたりと、街の空気に溶け込むようなナードなルックが余韻を残していく。
また、シャツにはいくつも結び目のディテールを加え、ジャケットやケーブル編みニットの袖は二重になっている。ベーシックウェアを土台に遊び心のあるギミックを加えたアイテムは、娯楽との接点を求める時のささやかな衝動を象徴しているかのようだ。
ロサ会館のシンボルでもある、バラのモチーフもアイキャッチ。赤いバラの花が面を埋め尽くすようなプリントワンピースをはじめ、プリーツスカートやレギンスなど、様々なアイテムにバラがあしらわれている。ロサ会館からのインスピレーションだけではなく、地元の商店街にあったブティックからも着想を得ており、少し褪色したような、温かみのある色合いのプリントレギンスや、ローズ柄ジャカードのバッグはノスタルジックなムードを醸し出していた。
直近の2、3シーズンは自分なりにエレガンスを模索してきたが、心の中で女性像を描き出していくうちに現実と乖離しているのではないか、と気が付いたというデザイナーの吉田圭佑。そこで、今季は現実に向き合いつつ、街中になじむ佇まいながらも、そこに美意識を感じられるような服を提示したい、と考えた。テーラードを軸とするクリエーションのスタイルは大切にしながらも極端なシェイプは減らし、日常的な服と合わせて着られるようなウェアを提示している。
イブニングコートにはかっちりとした硬質な生地の代わりにシャギーのように柔らかさのある生地を使ってみたり、テーラードジャケットはパワーショルダーで肩を強調しながらも、身体のラインに沿う流れるような仕立てを採用してみたり。仕上がりの美しさを追求する一方で、身にまとったときの身体とのなじみやすさや、気負いなく着られる着やすさについても考慮されている。